個人間のお金の貸し借りはするべきではない
「友人や知人にお金を貸したのに、約束の日になっても返済がない」
「返済を何度も先延ばしにされ、ついに音信不通になってしまった」
このようなご相談は少なくありません。結論から言えば、個人間のお金の貸し借りはするべきではありません。理由は以下のとおりです。
返済がなかったときの対応にコストがかかる
お金を貸した相手が約束どおりに返済をしない場合、回収をするためには裁判所を納得させられるだけの証拠を集め、判決を得る必要があります。判決を得ても支払いがなければ、相手方の財産を調べて強制執行を行う必要があります。これらの対応に必要な費用は、お金を貸した側の持ち出しとなります。また、弁護士に対応を依頼する・しないに関わらず相応の時間も費やすことになります。
個人からお金を借りる必要があるという状況それ自体が異常
お金を借りる必要が生じたとき、通常の人は銀行や消費者金融からの借り入れを検討します。その人が銀行などから借り入れをできないということは、お金を貸すプロである銀行が、「その人にお金を貸しても返ってこない可能性が高い」と判断していることを意味します。そのような人に、個人がお金を貸すことの危険性をご理解いただくべきです。中には、初めから返すつもりがないケースさえ存在しています。
自己破産をされてしまえば回収ができない
個人間のお金の貸し借りについて、借用書や公正証書を作成したり、判決を取得したとしても、相手が自己破産をしてしまえば相手方の支払義務は免除されます。相手が自己破産をするかどうかは相手の完全な自由であり、貸した側はその判断に関与できません。お金を貸すということは、相手次第でいつでも返済を受ける法的な権利がなくなる可能性がある立場になるということです。
それでもお金を貸す場合
個人にお金を貸した場合、返ってこないケースがあることは十分にご理解いただけたと思います。それでもお金を貸す場合は、最低限次の対応を採っていただくべきです。
借用書や公正証書を作成する
貸し借りを行った客観的な証拠を残すため、借用書を作成してください。借用書の雛形・テンプレートはこの記事の最後に用意させていただきました。なお、当事務所の借用書の雛形・テンプレートをご利用いただいたことで発生したトラブルや損害について当事務所は一切の責任を負いませんので自己責任の上でご利用ください。
作成には手数料が掛かりますが、貸し借りの金額次第では公正証書を作成することもメリットがあります。
お金のやりとりは銀行振り込みで行う
貸付や返済は銀行振り込みで行っていただくことが望ましいです。手渡しでのやりとりは、お金が移動した記録が残らず適切ではありません。
相手の個人情報を把握する
支払いが滞った際には、民事訴訟や強制執行の手続きを進めなければなりませんが、相手の個人情報が不明であれば、裁判手続の際に支障となります。相手の氏名・住所・携帯電話番号に加え、勤務先の情報がわかっていることが望ましいです。携帯電話番号に関しては、通話をして実際に相手に繋がることを確認してください。
担保を取る
貸し借りの金額次第では、担保を取ることを検討してください。相手が支払いをしないときに相手に代わって返済をする義務のある連帯保証や、相手が不動産を有している場合の抵当権の設定などが挙げられます。抵当権の設定には登記手続が必要なほか、連帯保証に関しても連帯保証人が過大な責任を負うことを回避するために近時規制が厳しくなっています。連帯保証や抵当権の設定は必ず弁護士に事前に相談をしてください。
弁護士がお手伝いできること
「のらりくらりと対応され、結局1円も返ってこなかった」というケースはけして少なくなく、まだお金を貸していない場合、お金を貸すことはおすすめできません。
どうしても貸す場合は、借用書や公正証書の作成や担保の設定について弁護士に個別にご相談いただき、適切な内容の書面を作成していただくべきです。
また、既に貸してしまっていて返済がない場合、回収について弁護士にご相談いただくことで、民事訴訟や強制執行を通じて債権回収ができる場合があります。借用書などの証拠の有無や把握できている相手の個人情報の内容により回収の可能性は異なりますので個別にご相談ください。
借用書雛形
必要最低限の約束事について定めた借用書の雛形をご用意させていただきました。公正証書を作成する場合や、連帯保証人・抵当権の設定など担保を取る場合その他特殊なご事情がある場合にご利用いただくことは適切ではございません。なお、当事務所の借用書の雛形・テンプレートをご利用いただいたことで発生したトラブルや損害について当事務所は一切の責任を負いませんので自己責任の上でご利用ください。