弁護士コラム

不動産執行(強制競売)

2024.02.16

債務名義の内容を実現するために~不動産の強制競売手続き

・民事訴訟で判決を取得したが被告からの支払いがない
・調停や公正証書で養育費が決められているが義務者からの支払いが滞っている

このような状況でお困りの方は少なくない印象です。債務名義(民事訴訟の確定判決や、調停調書、公正証書)があっても債務者から任意の支払いが得られない場合は、債権者の側で強制執行の手続きを行い、債権を実現するために行動しなければなりません。

強制執行の対象となる財産は、給与債権や銀行の預金債権、動産等多岐にわたるものですが、今回は債務者が不動産を有している場合における強制競売について検討していきます。

不動産の強制競売とは?

不動産の強制競売とは?

債務者が不動産(一戸建ての自宅やマンション、土地)を有している場合、債務名義を有する債権者は、この不動産を売却してお金に換えて債権の弁済に充てることができます。もっとも、強制競売の申立てにもメリット・デメリットがあります。

メリット

① 土地・建物・マンションなどの不動産は高い資産価値を有します。そのため、未払いの債権を一括で回収できる可能性が高いです。

② 不動産は隠匿し辛い財産です。銀行の預金や動産(各種機械類、商品、高級時計、絵画、宝石類)に比べ、存在の有無を調査しやすく、調査によっておおよその評価額も確認することができるため、強制競売を行うべきかどうかの判断がし易いのが特徴です。

デメリット

① 強制競売は、申立後に裁判所が不動産を調査する・入札を行うなどの手続きに時間がかかります。申立から配当までおおむね1年程度から長いケースでは数年を要する場合もあります。

② 強制競売の申立時に裁判所に「予納金」を納める必要があります。予納金は、裁判所が調査や鑑定評価を行うための費用やその他実費に充てる費用として使うお金です。予納金の金額は、申立を行う裁判所や請求債権額によって差異がありますが、大阪地方裁判所の場合、通常のケースで90万円が必要となります。そのほかにも申立手数料や登録免許税がかかってきますので、合計すると100万円程度の出費が必要です。

事前調査・申立準備

必要書類についての網羅的な案内は裁判所のホームページが詳しいため、「○○地方裁判所(申立予定の裁判所) 強制競売」などで検索をしていただくことで確認していただくことができます。以下は、大阪地方裁判所の案内ページです。

https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/tetuzuki_minji14/sikkou_fudousan/index.html

 

まずは、債務者が所有している不動産について、法務局で不動産登記事項証明書を取得していただき、抵当権などの担保権が設定されていないか、ほかに差押えが入っていないかなどを確認してください。

不動産の状況に問題がなければ、そのまま法務局で不動産の図面を取得していただくとスムーズです。

その他、債務者の住民票(必要に応じて戸籍の附票)、不動産の評価証明書や公課証明書の取得については市役所で申請をしていただく必要があります。

不動産の調査や図面の取得については、ご本人様でもさほど困難な手続きではありませんが、住民票や評価証明書等の取得の際には、債権者であることを示すために、裁判所に提出予定の強制競売申立書の提出を求められることもあります。また、不動産の所在が遠方の場合や、債務者が不動産購入後や判決後に住民票を異動させている場合、債務者が外国籍だったことがあり住民票や戸籍の附票の記載のみでは判決と不動産登記簿上の住所・氏名の連続を証明できない場合などの対応はご本人様ではかなり難しくなってきます。

弁護士向け

強制競売や破産管財業務のために弁護士が不動産の公課証明書を取得する場合、取得の方法が用意されていないようにも思われますが、日弁連会員専用サイトに掲載のある「固定資産評価証明書の交付申請書」を流用することで多くの場合取得が可能です。同申請書の「評価」の部分を二重線で訂正し「公課」と改め、使用目的には「強制競売申立」や「破産管財業務」としてください。通常は、委任状・強制競売申立書の写し・債務名義の写しの提出が求められます。窓口に備え付けの一般の申請書を使用することを求められる場合もありますが、固定資産評価証明書の交付申請書を用いることを求められる場合もあり地域により取り扱いが異なるようです。

まとめ

まとめ

不動産の強制競売は上手く活用できれば債権を一括で回収できる可能性のある非常に効果的な手段です。もっとも、具体的な状況によってはご本人様での手続きが難しいか現実的に不可能である場合もございます。判決を有しているが債権の回収ができていない場合や、途中まで準備を進めたものの取得できない書類があり対応が滞ってしまった場合はご遠慮なく当事務所にご相談ください。実績豊富な弁護士が速やかな債権回収をお手伝いさせていただきます。

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