弁護士コラム

【相続と認知症】
相続人に「判断能力がない人」がいると手続きがストップ?
成年後見の負担を回避する「遺言書」の重要性

2026.01.08

はじめに:ある日突然、親の預金が下ろせなくなる?

はじめに:ある日突然、親の預金が下ろせなくなる?

「父が亡くなり、母と私たち子供で遺産を分けようとしたら、銀行で断られてしまった…」

高齢化が進む現在、このようなご相談が急増しています。その原因の多くは、相続人の中に「認知症」などで判断能力が不十分な方が含まれているケースです。

相続手続き、特に「遺産分割協議」は、相続人全員の合意が必要です。

しかし、その中に一人でも法的な判断能力がない方がいると、遺産分割協議自体が成立せず、預金の解約も不動産の名義変更も一切できなくなる(資産が凍結される)という深刻な事態に陥ります。

この記事では、なぜそのような事態になるのか、そして、大変な負担を伴う「成年後見制度」を利用せずに済む唯一の解決策である「遺言書」について、弁護士が解説します。

なぜ、認知症の相続人がいると手続きが止まるのか?

遺産相続において、遺言書がない場合は、相続人全員で「誰がどの財産をもらうか」を話し合って決める「遺産分割協議」を行わなければなりません。

 

この協議が有効に成立するためには、以下の大前提があります。

  • 相続人「全員」が参加し、合意すること
  • 参加する全員に、法的な「意思能力(判断能力)」があること

 

重度の認知症や知的障害、精神障害などで判断能力がない方は、法的に有効な合意(署名・押印など)をすることができません。

そのため、「本人の代わりに長男がハンコを押す」といったことは法律上認められず、無効となります。

金融機関や法務局も、本人の意思確認ができない書類では手続きを受け付けてくれません。

結果として、遺産分割協議がいつまでも完了せず、故人の預金が引き出せない、実家が売れないという「塩漬け状態」になってしまうのです。

手続きを進めるには「成年後見人」をつけるしかない?

遺言書がなく、判断能力がない相続人がいる場合、適法に遺産分割を行う唯一の方法は、家庭裁判所に申し立てて、その相続人のために「成年後見人」を選任してもらうことです。

しかし、この成年後見制度の利用には、ご家族にとって非常に重い負担がかかる場合があります。

1.手続きに時間と費用がかかる

申立てから選任まで数ヶ月かかります。また、医師の診断書や申立費用が必要です。

2.専門家が選ばれることが多い

親族が後見人になれるとは限りません。

財産額などによっては、弁護士や司法書士などの専門家が選任され、その場合、月額数万円の報酬を(本人が亡くなるまでずっと)本人の財産から払い続ける必要があります。

3.柔軟な遺産分割ができなくなる

後見人は「本人の財産を守る」ことが仕事です。

そのため、「お母さんの生活のために、今回はお母さんに全財産を相続させる」といった、本人(認知症の方)の取り分(法定相続分)を減らすような遺産分割には、原則として同意できません。

ご家族の事情に合わせた柔軟な分け方ができなくなります。

「相続手続きのためだけに後見人をつけたかったのに、一生やめられないし、費用もかかるなんて」と後悔されるケースも少なくありません。

唯一の回避策:元気なうちに「遺言書」を作成する

このような事態を避け、成年後見制度を利用せずにスムーズに相続手続きを行うための唯一にして最良の方法は、被相続人(財産を残す方)が元気なうちに「遺言書」を作成しておくことです。

なぜ遺言書があれば解決するのでしょうか?

遺産分割協議が「不要」になるから

遺言書で「全財産を妻に相続させる」や「自宅は長男に、預金は長女に相続させる」と指定されていれば、原則として遺産分割協議を行う必要がありません。

したがって、相続人の中に認知症の方がいたとしても、その方の合意やハンコをもらう必要がなく、遺言書の内容に従って、直ちに預金の解約や不動産の名義変更が可能になります。

「成年後見人」を選任する必要がない

遺産分割協議が不要なので、わざわざ相続手続きのためだけに成年後見人をつける必要もなくなります。

「公正証書遺言」が強くおすすめ

遺言書には、自分で書く「自筆証書遺言」もありますが、認知症やお子様の精神疾患対策としては「公正証書遺言」を強くお勧めします。

  • 形式不備で無効になるリスクがない
  • 原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの恐れがない
  • 公証人が作成するため、作成当時の判断能力が担保されやすく、後で揉めにくい

認知症になってからでは、遺言書も作れません

ここで最も重要な注意点があります。

遺言書は、ご本人に判断能力があるうちしか作成できません。

認知症が進行し、判断能力が失われてしまった後では、もう遺言書を作ることはできず、前述した「成年後見制度」を利用するしか道がなくなってしまいます。

「うちはまだ大丈夫」と思っている今こそが、対策をとるべきタイミングなのです。

家族の負担を減らすため、早めのご相談を

家族の負担を減らすため、早めのご相談を

配偶者や障害のあるお子様など、将来、判断能力に不安があるご家族がいらっしゃる場合、遺言書の作成は、「残されたご家族を守るための必須の備え」と言えます。

ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、相続・遺言作成のサポートに豊富な経験がございます。

「家族に認知症の気配がある」「障害のある子が困らないようにしたい」など、ご家庭の事情に合わせた最適な遺言書の内容をご提案します。

初回のご相談は無料です。手遅れになってしまう前に、ぜひ一度、私たちにご相談ください。

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