はじめに:離婚届は、離婚協議の「ゴール」です
離婚を決意し、相手方との間で合意ができたとき、法律上の夫婦関係を解消するために市区町村役場へ提出するのが「離婚届」です。
この一枚の紙を提出することで、お二人は法的に他人となり、新たな人生をスタートさせることができます。
しかし、この離婚届は、離婚に向けた話し合い(離婚協議)の「スタート」ではなく、全ての取り決めが終わった後の「ゴール」であるべきです。 養育費や財産分与など、重要なことを何も決めないまま、感情的に離婚届にサインしてしまうと、後で取り返しのつかない不利益を被る可能性があります。
この記事では、離婚に関する重要な取り決めを終えた方を前提に、離婚届を不備なく作成・提出するための具体的な書き方と注意点について、弁護士が項目別に徹底解説します。
届出の前に!必ず決めておくべき重要事項
離婚届を書き始める前に、以下の点について、必ず相手方と合意しておきましょう。
そして、その合意内容は「離婚協議書」や、より強制力の強い「公正証書」といった書面にしておくことを強くお勧めします。
- 親権者 :未成年のお子様がいる場合、どちらが親権者となるか。
- 養育費 :金額、支払期間、支払方法など。
- 面会交流:頻度、方法など。
- 財産分与:預貯金、不動産、保険、自動車などの分け方。
- 慰謝料 :発生する場合の金額、支払方法など。
- 年金分割:一方が他方の扶養に入っていた期間がある場合
これらの取り決めが、離婚後のあなたの生活の基盤となります。
項目別・離婚届の書き方
それでは、離婚届の各項目の書き方を見ていきましょう。
下記のページから、伊丹市が提供している離婚届の様式を確認できますので、ご参考にしてください。
(※様式は市区町村によって若干異なりますが、記載内容は全国共通です)
① 氏名・生年月日
夫と妻、それぞれの氏名・生年月日を記入します。戸籍に記載されている通りの氏名を、楷書で正確に書きましょう。
② 住所・世帯主
住民登録をしている現在の住所と、その世帯主の氏名を記入します。
③ 本籍
現在の本籍地を、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)に記載されている通り、地番まで正確に記入します。本籍地が分からない場合は、事前に戸籍謄本を取得して確認しましょう。
筆頭者の氏名は、戸籍の一番最初に記載されている人(通常は夫)の氏名です。
④ 父母の氏名・続き柄
ご自身の父母の氏名を記入します。父母が婚姻中であれば母の姓は記入不要です。
続き柄は、長男・二男、長女・二女などを選択します。
⑤ 離婚の種別
話し合いによる離婚の場合は「協議離婚」にチェックを入れます。
⑥ 婚姻前の氏にもどる者の本籍
婚姻によって姓を変えた側(多くは妻)が、離婚後にどうするかを選択する非常に重要な項目です。
ほとんどの方が「婚姻前の氏にもどる」ことを選択します。
本籍の選択
もとの戸籍にもどる:実家の父母などの戸籍に戻ります。
新しい戸籍をつくる:自分を筆頭者とする新しい戸籍を作ります。
離婚後も婚姻中の姓を名乗る場合には提出する書類が増えます。
ミスが生じやすい部分ですので、市役所の窓口で実情に沿った記載ができるようアドバイスを受けるようにしてください。
⑦ 未成年の子の氏名
未成年(18歳未満)のお子様がいる場合、その氏名を記入します。
父か母か、どちらが親権を行うかによって記入欄が異なりますのでご注意ください。
ここで決めた親権者が、戸籍にも記載されます。
⑧ 同居の期間
結婚式を挙げた日、または、同居を始めた日のうち、早い方を書きます。おおよその年月で構いません。
⑨ 別居する前の住所
既に別居している場合に記入します。
⑩ その他
通常は記入不要です。
⑪ 届出人署名
この署名欄だけは、必ず、夫と妻がそれぞれ自筆で署名してください。
よくあるご質問として、「相手が他の欄を書いてくれない」というものがありますが、法律上、相手方に自筆で書いてもらう必要があるのは、この署名欄だけです。
他の項目(相手の生年月日や本籍など)は、あなたが相手から聞き取ったり、書類を見たりして記入しても問題ありません。
法改正により、2021年9月1日から、署名欄横の押印は任意となりました。つまり、押印がなくても、署名だけで離婚届は受理されます。
もちろん、慣例として押印しても構いません。その場合は、夫婦それぞれ別の印鑑(認印で可)を使用してください。
⑫ 証人
協議離婚の場合、成人(18歳以上)2名の証人による署名が必要です。
証人は、両親、兄弟、友人など、誰でも構いません。離婚の事実を知っている人にお願いするのが一般的です。
証人には、氏名、生年月日、住所、本籍を記入し、署名してもらいます(押印は任意)。
証人になってくれる人が見つからない場合、弁護士や行政書士が提供する証人代行サービスを利用する方法もあります。
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「本籍地を覚えていない」
「婚姻中の姓を名乗りたい」
「相手方の父母の正確な氏名がわからない」
離婚届を作成する際にこのような疑問は少なくありません。
市役所であれば、戸籍や住民票を取得できますので、不安がある場合は窓口で戸籍を取得した上で担当者にご相談いただきつつ記入を進めていただくと不備なく進めることができます。
離婚届の提出
提出先
夫または妻の本籍地、または所在地の市区町村役場。
持参するもの
- 記入済みの離婚届
- 提出者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- (本籍地以外の役所に提出する場合)戸籍謄本 ※役所によっては不要な場合もあります
離婚届はシンプルでも、離婚協議は複雑です
ここまで見てきたように、離婚届の「書き方」自体は、決して難しいものではありません。しかし、本当に重要なのは、その一枚の紙にサインをする「前段階」です。
- 養育費の金額は、本当に適正ですか?
- 財産分与で、あなたが見落としている財産はありませんか?
- 口約束だけで、将来の支払いは本当に保証されますか?
離婚届を提出してしまった後で、「やっぱりあの時の約束はおかしい」と覆すのは、非常に困難です。
弁護士は、離婚届の書き方をアドバイスするだけでなく、その前提となる離婚条件の交渉、そして、その約束事を法的に有効な「離婚協議書」や「公正証書」として形に残すための、最も重要なパートナーです。
新しい人生への、正しい第一歩を
離婚は、新しい人生のスタートです。
そのスタートでつまずき、後悔を残さないためにも、離婚届にサインをする前に、ぜひ一度、専門家である弁護士にご相談ください。
ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、数多くの離婚問題を手掛けてまいりました。
初回のご相談は無料です。あなたが法的に保護された、最善の条件で、安心して新しい一歩を踏み出すために、私たちが全力でサポートいたします。


