はじめに:「親権は、どうせ母親に…」と諦めていませんか?

離婚を考えたとき、お子様のいる男性(父親)の多くが、真っ先に頭を悩ませるのが「親権」の問題です。
「これまでの裁判では、親権は母親が圧倒的に有利と聞く…」
「自分が親権を主張しても、どうせ認められないのではないか…」
このように、最初から親権の獲得を諦めてしまっている方も少なくありません。確かに、統計上、離婚後に親権者となるのは母親であるケースが多いのは事実です。しかし、それは「父親には親権が認められる余地はない」ということを意味しません。
裁判所が親権者を判断する上で最も重視するのは、「父親か、母親か」という性別ではなく、「どちらの親と暮らすことが、子どもの心身の健全な成長にとって最も望ましいか(子の福祉)」という、ただ一点です。
この記事では、お子様の親権を強く望む父親が、その実現のために知っておくべき重要なポイントと、具体的な法的手続きについて、分かりやすく解説します。
親権者判断の最重要基準「子の福祉」と4つのポイント
裁判所は、子の福祉の観点から、以下の4つのポイントを総合的に考慮して、親権者を判断します。
①監護の継続性(これまで主に面倒を見てきたのは誰か)
裁判所が最も重視するポイントです。裁判所は、子どもの生活環境をできるだけ変えず、安定した生活を継続させることを優先します。
したがって、離婚の話が出る前から現在に至るまで、主としてお子様の監護(身の回りの世話)を担ってきた親が、親権者として非常に有利になります。
「監護の実績」の具体例
- 食事の準備、お風呂に入れる、寝かしつけ
- 保育園や幼稚園、学校への送迎
- 学校行事やPTA活動への参加
- 宿題を見たり、一緒に遊んだりする時間
- 病気やケガの際の病院への付き添い
「仕事で忙しかったから」という理由だけでは、監護実績の不足を補うことは困難です。
日頃から、いかにお子様と密接に関わり、育児を主体的に行ってきたかが問われます。
② 離婚後の監護体制が整っているかどうか
これまでの実績だけでなく、離婚後に安定的にお子様を育てていける環境が整っているかどうかも、厳しく調査されます。
具体的な計画
- 仕事と育児の両立:残業や出張への対応策(ベビーシッター、ファミリーサポートの活用など)
- 監護補助者の存在:ご自身の両親(子どもの祖父母)など、育児をサポートしてくれる親族が近くに住んでいるか
- 経済的な安定:安定した収入があるか
- 住環境:子どもが健やかに暮らせる住環境が確保されているか
- 面会交流:離婚後の面会交流の実施に積極的か
注意点
ご両親や御兄弟などの監護補助者の有無は大切です。ただし、補助者はあくまでも補助者です。
原則として、ご自身が自分で監護することが必要で、祖父母任せ、ということは認められません。
③ お子様の意思の尊重(年齢による)
お子様がある程度の年齢に達している場合、その意思も尊重されます。
目安として、おおむね10歳以上であれば、家庭裁判所の調査官がお子様と面談するなどして、その意向が聴取されます。15歳以上ともなれば、特別な事情がない限り、お子様の意思が最も重要な判断要素となります。
「パパと一緒に暮らしたい」というお子様の明確な意思は、非常に強力な武器となります。
注意点
お子様の意思も裁判所にとって判断要素の一つとなりますが、重要視し過ぎることは危険です。
お子様が小さい場合でも、両親の顔色を伺い母親には「パパ嫌い」と言い、父親には「パパと一緒がいい」と発言するケースは珍しくありません。
同居している側が子に言わせているだけの動画などが証拠として提出されることも目にしますが、裁判所はそう簡単にそのような証拠を信用しません。
④ 母親側の監護能力・適格性
母親に、お子様を監護する上で看過できない問題がある場合、父親が親権者として選ばれる可能性が高まります。
具体例
- 子どもに対する虐待やネグレクト(育児放棄)の事実がある
- 母親が重い精神疾患を患っており、安定した子育てが期待できない
- 浪費癖が激しく、子どものための生活費を使い込んでしまう
- 浮気相手との関係を優先し、子どもの監護を疎かにしている
注意点
ただし、単に「母親としてふさわしくない」といった感情的な主張だけでは不十分です。
診断書、写真、録音、第三者の証言といった客観的な証拠をもって、母親の監護能力に問題があることを具体的に示す必要があります。
4つのポイントのまとめ
重要なのは、「どちらの親と暮らすことが、子どもの心身の健全な成長にとって最も望ましいか」という観点から、自らの方が望ましいということを説得的に裁判所に伝えることです。
上記①・②の要素が決定的な判断要素となります。
④も考慮要素となりますが、①・②が欠けているにもかかわらず④だけで父親が親権を獲得することは容易ではありません。
感情的に相手方が不適切だと批判することは、あまり有効でないばかりか裁判所に悪い印象を与える場合も多いため、余程のケースでなければ避けるべきです。
「相手方は適切ではない」ではなく、「自分の方がより適切だ」という主張に注力するべきです。
別居時の対応と法的手続き
離婚を前提に別居する際、あるいは、相手が一方的にお子様を連れて家を出て行ってしまった場合、その後の親権者争いに決定的な影響を及ぼします。
「監護実績」の積み重ね
相手方がお子様を連れて別居を開始すると、その時点から相手方の「監護実績」が日々積み重なっていきます。別居期間が長引けば長引くほど、裁判所は「現在の安定した環境を変えるべきではない」と判断し、「監護の継続性」の観点から、相手方が圧倒的に有利になります。
取るべき法的手続き「子の引き渡し」と「監護者指定」
もし、あなたが主たる監護者であったにもかかわらず、相手がお子様を一方的に連れて出て行ってしまったような場合には、一刻も早く、家庭裁判所に対して「子の引渡し」と「監護者の指定」を求める調停・審判(および審判前の保全処分)を申し立てる必要があります。
これは、離婚が成立するまでの間、暫定的にどちらがお子様を監護するかを定める手続きであり、初動の速さが勝負となります。この対応が遅れると、親権獲得は絶望的になりかねません。
調停・審判での対応
親権について夫婦間の話し合い(協議)で合意できない場合は、家庭裁判所での「調停」に進みます。
調停では、調停委員を介して話し合いを行いますが、ここでの主張が非常に重要です。 調停でも合意に至らなければ、「審判」または「訴訟」に移行し、最終的に裁判官が親権者を指定します。
これらの手続きでは、これまで述べてきた各ポイントについて、いかに客観的な証拠をもって、説得的に主張・立証できるかが全てです。
父親の親権獲得に弁護士のサポートが不可欠な理由
父親が親権を獲得するためには、法律の知識と、裁判手続きを見据えた戦略的な対応が不可欠です。
1.的確な戦略の立案
離婚を切り出す前から、有利な「監護実績」をどのように作り、証拠として残していくか、具体的なアドバイスを行います。また、別居のタイミングや方法など、相手に主導権を渡さないための戦略を立てます。
2.迅速な法的手続きの申立て
「子の引き渡し」や「監護者指定」が必要な事案では、一刻を争って、家庭裁判所への申立てを行います。このスピード感は、弁護士でなければ実現困難です。
3.証拠の収集と効果的な主張
連絡帳、母子手帳、写真、動画、第三者の陳述書など、あなたの監護実績を証明するための証拠を精査・収集し、調停や審判の場で、裁判官や調停委員に対し、論理的かつ説得的に主張します。
4.冷静な交渉の代理
感情的になりがちな当事者間の話し合いを避け、弁護士が代理人として冷静に交渉することで、円滑な解決を目指します。
お子様の未来のために、諦めずにご相談ください

父親であるというだけで、親権を諦める必要は全くありません。お子様への愛情と、これまで主体的に育児に関わってきたという事実、そして、離婚後もお子様を第一に考えた生活を送るという強い覚悟と具体的な計画があれば、親権を獲得できる可能性は十分にあります。
しかし、それを実現するためには、感情論ではなく、法的な戦略と証拠が必要です。
ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、親権問題を含む離婚事件に豊富な経験がございます。
「子どもの親権を本気で考えている」「相手に子どもを連れて行かれてしまった」など、お悩みの状況にあれば、手遅れになる前に、ぜひ一度ご相談ください。
もちろん、お母様側の立場での対応も承っております。
初回のご相談は無料です。お子様にとって最善の未来を実現するために、私たちがあなたの最も強力なパートナーとなります。