はじめに:急増する「副業詐欺」のワナ

「スマホ一台で、好きな時間に高収入!」
「誰でも簡単に始められる副業です」
「主婦や会社員の方に大人気!月収50万円も夢じゃない!」
働き方の多様化や物価高を背景に、副業への関心が高まっています。しかし、その一方で、このような甘い言葉で人々を誘い、金銭をだまし取る「副業詐欺」の被害が急増しています。
SNSやインターネット広告を通じて、見ず知らずの人からの接触が容易になった分、そのワナは私たちのすぐ身近に潜んでいます。
副業詐欺の加害者の目的は、あなたに仕事を提供することではありません。
仕事を紹介する、ノウハウを教えるなどと偽って、あなたから様々な名目でお金(登録料、出資金、サポート費用、情報商材代など)を支払わせたり個人情報を取得することが真の目的です。
この記事では、副業詐欺の典型的な手口とその見分け方、そして万が一被害に遭ってしまった場合の対処法について、弁護士が分かりやすく解説します。
これが典型的な手口!よくある副業詐欺のパターン
副業詐欺には様々な手口がありますが、特に注意すべき典型的なパターンをいくつかご紹介します。少しでも当てはまる場合は詐欺の可能性があります。
① 登録料・初期費用詐欺
- 手口
「簡単なデータ入力」「シール貼り」といった誰でもできそうな仕事を提示し、「仕事を開始するためには、まず登録料や、マニュアル・機材などの初期費用が必要です」と言って、数千円~数万円の支払いを求めてくる手口です。 - 結末
お金を支払っても、約束された仕事は紹介されず、価値のない情報が送られてくるだけだったり、「もっと高レベルの仕事をするには、さらに高額なサポート契約が必要です」などと、次々に追加費用を要求されたりします。最終的には連絡が取れなくなります。
② 情報商材・ノウハウ詐欺
- 手口
「アフィリエイトで月収100万円を稼ぐ方法」「FXの必勝法」など、儲け話のノウハウが詰まっているとされる情報商材(PDFや動画など)を、数万円~数十万円という高額で販売する手口です。 - 結末
購入してみると、内容はインターネットで誰でも調べられるような一般的な情報や、全く役に立たないものばかり。高額な支払いだけが残り、返金を求めても応じてもらえません。
③ 簡単な作業で信用させる「タスク詐欺・立て替え型」
- 手口
SNSなどで「指定された商品を『いいね』するだけ」「毎日SNSに特定の投稿をするだけ」「通販サイトのレビューを書くだけ」といった簡単なタスク(作業)を持ちかけられます。最初は、信用させるために実際に数百円程度の少額な報酬が支払われることもあります。 - 巧妙なワナ
次第に「より高額な報酬のタスクに進むには、まず商品を自分で立て替え購入する必要がある。代金は報酬と一緒に後で支払う」などと持ちかけられます。最初は数千円の立て替えですが、徐々に金額がエスカレートし、「エラーが発生した」「ランクアップに必要」などと様々な理由をつけて、数十万円単位の高額な支払いを要求されます。被害者は、それまでに投資した分を取り戻したいという心理から、支払いを続けてしまうことになります。 - 結末
ある程度高額な支払いをさせた時点で、相手と連絡が取れなくなり、立て替えたお金も報酬も一切支払われることはありません。
④ 投資・資産運用型詐欺
- 手口
「副業」と称して、実態は詐欺的な投資話に誘導するケースです。偽の投資アプリやサイトに登録させ、最初は少額の利益が出ているように見せかけて信用させ、より高額な資金の投入を促す手口です。 - 結末
いざ出金しようとすると、「税金」「手数料」などと称してさらなる支払いを要求されたり、サイト自体が消滅したりして、全額をだまし取られます。
怪しい副業を見分けるチェックリスト
甘い言葉に惑わされないために、以下の点に一つでも当てはまったら、詐欺を疑ってください。
□ 何らかの理由でお金の支払いを要求される(登録料、出資金、教材費、サポート費など)
□ 「誰でも」「簡単に」「確実に儲かる」といった、あり得ないうますぎる言葉が多用されている
□ 仕事内容や会社の情報が曖昧
□ 連絡手段が個人のSNSアカウントやLINE・チャットアプリのみ
□ 「今だけ」「限定〇名」などと、契約や支払いを急がせる
□ クレジットカードでの高額決済や、消費者金融での借入れを勧められる
□ 暗号資産(仮想通貨)での支払い・送信を求められる
□ 振込先が個人名義の銀行口座・都度別の振込先口座を案内される
□ 銀行口座の開設や提供を求められる
□ 毎月4%の利益があるなど、あり得ない条件を提示される
大原則として、「仕事をするためにお金を払う」のは、通常ありえません。
誰でも楽に稼げる副業というものは存在していません。
特に、「借り入れについて詳しい人を紹介するからその人の言う通りにするように」、「毎回異なる振込先口座を案内される」、「暗号資産を送信するように」、「銀行口座を開設してキャッシュカードや暗証番号を提供するように」などと言われることは真っ当な仕事であれば100%あり得ません。
被害に遭ってしまったら?「おかしい」と感じたらすぐに相談を!
もし、少しでも「おかしいな」「騙されたかもしれない」と感じたら、一人で抱え込まず、すぐに以下の行動をとってください。
まずやるべきこと
- 相手との連絡を絶ち、それ以上の支払いは絶対にしない。
- これまでのやり取りの証拠(メッセージのスクリーンショット、振込履歴、相手の連絡先など)を全て保存する。
相談窓口
- 家族や信頼できる友人
まずは身近な人に状況を話し、客観的な意見をもらいましょう。 - 警察相談専用電話「#9110」
詐欺は犯罪です。警察に被害の状況を相談しましょう。具体的な被害届の提出についても案内してもらえます。 - 消費者ホットライン「188(いやや!)」
全国の消費生活センターや相談窓口につながる電話番号です。今後の対応について専門の相談員からアドバイスを受けられます。 - 弁護士
法的な手段(返金交渉、訴訟など)を具体的に検討する場合の専門家です。
ただし、基本的に被害の回復は極めて困難です。
特に、暗号資産を送信している場合には警察でも捜査ができない場合がほとんどです。にもかかわらず、なかには、被害回復が可能として高額な調査費用を要求する業者が存在していることも確認されています。
警察でも捜査ができないことについて民間の業者にできることはありません。これらは更なる二次被害を生むことになりますので絶対に惑わされないでください。
万が一、銀行口座や個人情報を提供してしまった場合には、次の別の詐欺においてその口座や個人情報が使用されます。別の被害者から損害賠償請求を受けるケースも増えています。
甘い言葉に惑わされず、冷静な判断を

「少しでも家計の足しにしたい」「お小遣いを稼ぎたい」という気持ちにつけ込む副業詐欺は、非常に悪質です。
「うますぎる話」には必ず裏があると考え、冷静に判断することが何よりも大切です。
少しでもおかしいと感じたら、ご家族や警察に相談することを躊躇せず、速やかに行動してください。