弁護士コラム

【絶対ダメ!】銀行口座の売買や貸し借り、
その先に待つ刑事罰と高額賠償責任|弁護士が解説

2025.05.12

はじめに:「簡単にお金が手に入る」その誘惑の大きな代償

「使っていない銀行口座を買い取ります」

「口座を貸してくれるだけで高額謝礼」

SNSやインターネット掲示板、あるいは知人を通じて、このような誘い文句を見聞きしたことがあるかもしれません。「少しお金に困っているから」「どうせ使っていない口座だし」と軽い気持ちで応じてしまうと、取り返しのつかない事態に巻き込まれる可能性があります。

銀行口座の売買や貸し借りは、法律で固く禁止されている危険な行為です。その先には、思いもよらない刑事罰や、多額の損害賠償責任が待ち受けていることをご存知でしょうか。

今回は、銀行口座を売買してしまった場合にどのような法的リスクがあるのか、特に口座名義人が負うことになる民事上の損害賠償責任について、弁護士が分かりやすく解説します。

銀行口座を売買や貸し借りすると、どうなるの?

銀行口座を他人に売ったり譲ったりする行為は、主に以下の3つの大きな問題を引き起こします。

① 刑事事件になる可能性
(犯罪による収益の移転防止に関する法律違反、詐欺罪の幇助など)

  • 犯罪収益移転防止法違反

他人に譲り渡す目的で預貯金口座を開設したり、預貯金通帳やキャッシュカード等を譲り渡したりする行為は、それ自体が「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(いわゆる「犯罪収益移転防止法」)違反となり、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

  • 詐欺罪・窃盗罪などの幇助犯(ほうじょはん)

売却・譲渡した口座が振り込め詐欺(特殊詐欺)やヤミ金融、マネーロンダリングなどの犯罪に利用された場合、その犯罪行為を手助けした(幇助した)として、詐欺罪や窃盗罪などの共犯(幇助犯)として処罰される可能性があります。この場合、より重い刑罰が科されることもあります。

② 民事上の損害賠償責任を負う可能性

後ほど詳しく解説しますが、あなたの口座が犯罪に使われ、被害者が発生した場合、その被害者から損害賠償を請求される可能性があります。

③ その他のペナルティ

  • 売却した口座だけでなく、あなたが持つ他の銀行口座も全て凍結されたり、解約されたりすることがあります。
  • 今後、長期間にわたって新たな銀行口座の開設が困難になる(いわゆるブラックリスト状態)可能性があります。これは日常生活に大きな支障をきたします。

【重要】口座名義人の「損害賠償責任」とは?

ここからは、民事上の損害賠償責任について詳しく見ていきます。

あなたが売ったり譲ったりした銀行口座が、振り込め詐欺などの犯罪に利用され、その結果、誰かが金銭的な被害を受けたとします。この場合、被害者は、実際に詐欺行為を行った犯人だけでなく、口座を提供したあなた(口座名義人)に対しても、被った損害の賠償を求めることができるのです。

これは、法律上の「不法行為責任(ふほうこういせきにん)」(民法709条)に基づくものです。 口座を売買する行為は、それ自体が違法であり、また、自分の口座が犯罪に使われるかもしれないという危険性を認識できた(あるいは認識すべきだった)にもかかわらず、安易に口座を提供したことについて「過失(かしつ)」があったと判断されるためです。

さらに、実際に詐欺を行った犯人と口座を提供したあなたは、「共同不法行為(きょうどうふほうこうい)」(民法719条)として、連帯して被害者に損害を賠償する責任を負うと判断されることが一般的です。 「連帯して責任を負う」とは、例えば詐欺の被害額が300万円だった場合、被害者は、詐欺の実行犯に対してだけでなく、口座を提供したあなたに対しても、300万円全額の支払いを請求できるということです。

実行犯が逮捕されても資力がなく、被害回復ができない場合、被害者は口座名義人であるあなたに賠償を求めてくる可能性が十分にあります。もし支払えない場合は、あなたの財産(給料、預貯金、不動産など)が差し押さえられることもあり得ます。

なぜ口座を売っただけでも責任を問われるの?

「自分はただ口座を売っただけで、詐欺をしたわけではないのに、なぜ?」と疑問に思うかもしれません。 しかし、裁判所は一般的に以下のように考えています。

  • 預貯金口座は、開設した本人が利用することを前提としており、他人に譲渡することは許されていない。
  • 振り込め詐欺などの犯罪では、犯行グループが他人名義の口座を不正に利用することが常套手段となっている。
  • 口座を売却・譲渡する行為は、そのような犯罪を容易にし、被害を拡大させる大きな原因となる。

 

つまり、安易に口座を売買する行為そのものが、犯罪を助長し、社会に害悪をもたらすものとして、厳しい法的責任が問われるのです。

口座を売ってしまった・請求を受けてしまった方へ

もし、あなたが既に銀行口座を売ってしまったり、あるいは犯罪被害者から損害賠償を請求する内容証明郵便が届いたりしている場合、絶対に無視したり、安易に対応したりしてはいけません

事態が悪化する前に、直ちに弁護士に相談することを強くお勧めします。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談・依頼することで、以下のようなサポートが期待できます。

刑事事件への対応

  • 警察からの取調べに対する適切なアドバイス。
  • 不起訴処分や執行猶予付き判決など、可能な限り有利な処分を得るための弁護活動。

民事事件(損害賠償請求)への対応

  • 請求されている金額の妥当性の検討。
  • 被害者側との示談交渉(賠償額の減額や分割払いの交渉など)。
  • あなたが口座売買に至った経緯(例えば、あなた自身も騙されていたなど)に酌むべき事情があれば、それを主張。
  • 訴訟を提起された場合の法廷弁護。

今後の生活へのアドバイス

  • 口座凍結の問題など、派生する問題への対応助言。

弁護士は、あなたの状況を法的な観点から正確に把握し、刑事・民事両面でのリスクを最小限に抑えるための最善策を一緒に考え、サポートします。

安易な口座売買や貸し借りは絶対に避けてください

「少しだけなら」「バレないだろう」という甘い考えが、あなたの人生を大きく狂わせてしまう可能性があります。銀行口座の売買は、犯罪であり、そして大きな民事責任を伴う行為です。絶対に手を出さないでください。

一見もっともらしい理由があっても、口座の売買や貸し借りが正しい行為である可能性は一切ありません。

特に、お子様など若年層の方がうまい話につられて口座を提供してしまうケースも増えています。

もし既に関わってしまい、お困りの状況にある方は、一人で悩まず、できる限り早く、ルーセント法律事務所にご相談ください。

当事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、口座売買のような複雑な問題にも対応しております。秘密は厳守いたします。

勇気を出して、まずはその一歩を踏み出してください。

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