弁護士コラム

【離婚原因】長期間の別居がある場合

2024.05.03

長期間の別居は離婚原因となる(離婚が成立する)

長期間の別居は離婚原因となる(離婚が成立する)

別居が長期間続いている場合、裁判所は婚姻期間が破綻していると判断し離婚を認める傾向にあります。長期間の別居の事実から婚姻関係の破綻が明らかになり、民法770条1項5号に定められている「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に当たると考えられるからです。

そのため、もしもあなたが離婚を希望していて、かつ既に長期間別居をしている場合はスムーズに離婚を成立させることができる可能性があります

離婚の方法(基礎知識)

離婚を成立させるためには、いくつかの方法があります。それぞれ、メリット・デメリットを見ていきましょう。

協議離婚

「協議」とは、当事者間で話し合いを行うということです。離婚を成立させるためには、①当事者が離婚をするということと、②(未成年のお子様がいる場合には、)誰がお子様の親権者となるのか、ということを話し合いで決めなければなりません。離婚の際には、慰謝料・財産分与・養育費などの金銭的な事柄についても決めておくことが望ましいですが、決めることは必須ではありません。

協議離婚は裁判所の関与なく当事者間のみで成立させることができます。調停や裁判に比べて時間や費用がかからないため、まずは協議での解決を目指すべきです。特に、あなたが婚姻費用の支払義務を負っている場合、離婚が成立するまでの間は婚姻費用の継続的な支払が必要となります。そのため、時間のかかる調停や裁判離婚を選択することは経済的負担が大きくなりますので次善の策とするべきです。

もっとも、当事者間で話し合いがまとまらない場合や、相手方(配偶者)の現在の住所がわからず話し合いの機会を持てない場合は協議離婚を成立させることはできませんので、調停や裁判離婚をご検討いただくことになります。

なお、日本における離婚の90%程度は協議離婚で解決しています。

調停離婚

「調停」とは、協議が成立しない場合に家庭裁判所の関与の下、当事者間の話し合いにより解決を目指すものです。離婚するということや、離婚条件について合意が形成できない場合には離婚が成立しないことは協議離婚の場合と同じです。

調停では、裁判所において調停委員とやりとりをすることになります。相手方と会いたくない場合は、裁判所に伝えておくことで接触しないように配慮してもらうことができます。当事者が各々希望や主張の裏付けとなる資料を裁判所に提出しながら手続きを進めていきます。相手方に見られたくない資料などがある場合は、相手方に開示しないようにすることもできます。

調停の場合は裁判所が関与しているため、離婚の成否や条件についてある程度裁判所側からの見解が示されたり、働きかけがあることが期待できます

もっとも、相手方が裁判所に出頭しないなど調停の手続きに非協力的な場合や話し合いがまとまらない場合には離婚を成立させることはできません。また、調停の期日(裁判所に行く日)は概ね月に1度程度となりますので成立する場合でも数ヶ月から1年程度の時間がかかってしまいます。調停中も引き続き婚姻費用の支払いが必要となることは大きなデメリットです。

なお、調停により離婚が成立しているのは全体の9%程度です。

裁判離婚

調停が成立しなかった場合は、裁判所の判決により離婚を行う「裁判離婚」を選択することになります。裁判離婚では、裁判所が当事者双方の主張や証拠を検討して離婚を認めるべきか判断をします。このときに必要となるのが、先にみた民法770条1項の離婚原因です。離婚原因がない場合は、裁判所は離婚を認めません。

離婚原因が存在していることが明白なケースでは、相手方が離婚を希望していないとしても裁判離婚により離婚を成立させることができます。

一方で、多くのケースでは裁判離婚の判決までには1年程度の時間がかかります。また、「調停前置主義(家事事件手続法第257条)」といって、裁判に先立って離婚調停を申立なければならないというルールがあり、原則としていきなり裁判離婚を進めることはできません。また、裁判所を納得させるだけの主張や証拠の提出を適切に行わなければならず、ご本人様のみでの対応は難しい場合が多いです。

なお、裁判離婚は統計上全体の1%程度です。

具体的な進め方や弁護士がお手伝いできること

まずは、相手方と離婚の話し合いを進めていただくべきです。離婚することや離婚条件について合意ができた場合は、離婚届を作成し役所に提出します。離婚条件の具体的内容次第では、離婚協議書を作成することが望ましい場合もあります。

→弁護士にご相談いただくことで、一方的に不利な内容で離婚が成立しないようにあらかじめアドバイスをさせていただくことや、離婚協議書の作成をご依頼いただくことができます。また、相手方との話し合いが精神的にご負担な場合は話し合い自体の代理をご依頼いただくことや、相手方の住所が不明な場合の調査などをご依頼いただくこともできます

 

話し合いが成立しない場合は、離婚調停の申立を進めてください。相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書など必要な書類を提出することになります。

→離婚調停までは、弁護士にご依頼いただくことなくご本人様で進めているケースも少なくありません。もっとも、適切な主張ができていない場合もあるようです。期日で調停委員から言われた内容が妥当なのかどうかわからない、というお悩みもよく耳にします。

調停が不調に終わった(成立しなかった)場合は、裁判離婚をご検討ください。

→裁判離婚は、離婚原因が存在するのかどうかという法的な判断が全てです。離婚原因が存在しないにもかかわらず申立を行っても離婚を認めてもらえることはありません。もしも、あなたが今裁判離婚を検討されている場合は、弁護士とご相談いただき離婚原因が認められそうかアドバイスを受けていただくべきです。

離婚原因となる別居期間は?

現在では、長期間の別居があると認められやすい別居期間は、3~5年程度であると考えられています。婚姻期間が長くなればなるほど、離婚のために必要となる別居期間も長くなる傾向にあります。また、裁判離婚においては単に別居期間のみを見るのではなく、一方の有責性や別居中の夫婦の交流の有無や内容をも考慮した裁判例もあります。

離婚に向けて動き出すべきタイミング

仮に、婚姻期間が長く(たとえば20年程度)、離婚が認められるためには5年の別居期間が必要と思われるケースを想定しましょう。なるべく早く離婚を成立させたい場合、相手方に離婚の話し合いを持ちかけるべきタイミングはいつでしょうか? 別居開始から5年後ではありません。

話し合いで離婚の合意ができればよいですが、調停や裁判が必要になった場合には裁判離婚の判決までには、2~3年の時間がかかります。この場合、別居期間は判決時(より正確には口頭弁論終結時)までをカウントしますので、調停や裁判で争っている期間も別居期間にカウントされることになります。そのため、この仮定のケースでは、すでに2,3年の別居期間があるのであれば、離婚に向けた行動をスタートしてよいと言えることになります(判決のタイミングでは、5,6年の十分な別居期間となっていることが想定されます。)。

一方、5年間別居したあとに離婚を進めた場合、裁判となると離婚の成立時には7年や8年の別居期間となっていることが予想され、本来よりも離婚の成立が遅くなることになってしまいます。

まとめ

まとめ

別居期間中の婚姻費用支払の経済的負担は大きなものです。配偶者が離婚に応じてくれず長期間の別居が続いているケースでも、適切に対応を進めることでスムーズな離婚を成立させられる場合もあります。

実際に当事務所にご依頼をいただいている事案を見ても、協議の段階から関与させていただいた結果、3ヶ月程度の短期間で協議離婚が成立しているケースが少なくありません。相手方の住所が不明なケースでも弁護士が調査を行うことで所在を把握でき、交渉をスタートできる場合もあります。

また、配偶者とのやりとりや交渉をすること自体が負担だというお悩み、ご相談も少なくありません。そのような場合でも、弁護士が代理人として早期の離婚成立に向けて交渉をさせていただきます。

離婚問題でお悩みの場合は、離婚事件を数多く取り扱う当事務所に是非一度ご相談ください。

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