弁護士コラム

発信者情報開示請求~回答書の記載方法

2024.02.05

意見照会書(発信者情報開示請求に係る意見照会書)とは?

意見照会書(発信者情報開示請求に係る意見照会書)とは?

意見照会書は、あなたが契約しているプロバイダがあなたの投稿や発信に関して発信者情報開示請求を受けたときに、契約者に対して送付される書類です。発信者情報開示請求の請求者が作成した発信者情報開示請求書とともに郵送され、「発信者情報を請求者に介してもよいか」ということを契約者に確認します。

日常生活の中で突然意見照会書が届き、驚く方は少なくありません。以下では、意見照会書が届いたときの対応や、回答書の記載方法についてご案内しています。

意見照会書は2度届く

発信者情報開示請求の請求者(投稿等により自らの権利が侵害されたと主張する者)は、投稿等に用いられていたインターネット回線のプロバイダに対して、まずは任意での発信者情報開示を求め、プロバイダが開示に応じない場合は裁判手続きを通じて発信者情報の開示を求めるという2段階の対応を行うことが通常です。

発信者への意見照会に関しては、プロバイダ責任制限法6条に、「開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、当該開示の請求に応じるかどうかについて当該発信者の意見(当該開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む。)を聴かなければならない。」との規定があり、多くのプロバイダでは、任意の発信者情報開示請求と、裁判手続きのそれぞれの段階において発信者への意見照会を行っています。そのため、一度意見照会書が届いたあとも油断せず、もう一度届くかもしれないということ、回答内容が変わらなくとも改めて対応をしなければならないことにご留意ください。

 

(開示関係役務提供者の義務等)
第六条 開示関係役務提供者は、前条第一項又は第二項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、当該開示の請求に応じるかどうかについて当該発信者の意見(当該開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む。)を聴かなければならない。

2 開示関係役務提供者は、発信者情報開示命令を受けたときは、前項の規定による意見の聴取(当該発信者情報開示命令に係るものに限る。)において前条第一項又は第二項の規定による開示の請求に応じるべきでない旨の意見を述べた当該発信者情報開示命令に係る侵害情報の発信者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、当該発信者に対し通知することが困難であるときは、この限りでない。

引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)

意見照会書は無視してよいか?

同意であれ不同意であれ、回答は必ず行うべきです。回答を得られなかったときのプロバイダの判断は様々ですが、「開示について異議がない」、「合理的な理由の説明なく開示に同意していない」と発信者にとって不利となる判断がされているケースもあるようです。

回答書の記載方法

① 開示請求に同意する場合

開示請求に同意する場合は、添付されている回答書の「発信者情報開示に同意します。」という項目に「○」印をつけて返送してください。

② 開示請求に不同意の場合

開示請求に不同意の場合は、添付されている回答書の「発信者情報開示請求に同意しません。」という項目に「○」印をつけて返送してください。また、不同意の場合は同意の場合と異なり、「理由」についても記載する必要があります。開示請求が任意の段階であっても、裁判手続きによる場合でも、この理由欄の記載は非常に重要です。なぜならば、特に裁判でプロバイダが開示を争っている場合において、プロバイダ側の代理人弁護士は投稿に至る経緯や具体的な事情を把握しておらず、抽象的に開示の要否を争うしかなく、十分な対応をすることが困難です。詳細な理由の記載は、プロバイダ側の代理人弁護士に反論の武器を与え、より充実した対応をしてもらえることが期待できます。添付の回答書の理由欄は狭いことが多いため、理由欄には「別紙理由書記載のとおり」と記載して、理由を記載した別の書面を添付していただいても問題ございません。

③ 具体的な理由記載のポイント

不同意の理由は、具体的にかつ法的な評価を含めて記載をすることが望ましいです。また、請求者が主張する権利侵害の内容に即して記載する必要があります。

名誉権侵害(名誉毀損)の場合

投稿内容が名誉毀損に当たるか否かが問題となります。開示を避けられるかどうかのポイントとなるのは、多くの場合、「投稿内容が真実であるか否か」ということです。投稿内容が真実であると判断できる根拠を具体的に記載し、併せて投稿をすることが公益に関係し、公益を図る目的により投稿したものであることについても記載します。

名誉感情侵害(侮辱)の場合

過去の判例によれば、「社会通念上許される限度を超える侮辱行為」に当たるかどうかが名誉感情侵害の判断基準とされています(最三小判平22.4.13民集第64巻3号758頁)。下級審では「誰であっても名誉感情を害されることになるような、看過しがたい、明確かつ程度の著しい侵害」とより具体化を試みている例もあります(さいたま地判平29.7.19公刊物未登載)。投稿内容や投稿に至る経緯、投稿前後にあるその他の投稿から読み取れる文脈を含めて、侮辱には当たらないと説明していきます。

プライバシー権侵害の場合

プライバシーとは「他人にみだりに知られたくない個人に関する情報」であるとされています。不同意の理由としては、そもそも投稿内容にプライバシーに当たる情報が含まれていないということや、含まれているとしても、「事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由」を比べた上で、後者が優越するということを説明する必要があります。

弁護士がお手伝いできること

弁護士がお手伝いできること

上記以外にも、著作権侵害や肖像権侵害、営業権侵害を理由として発信者情報開示請求がなされることもあります。また、上記に含まれるものでも、なりすましのケースはどうか、犯罪報道はどうか等個別の論点を有するケースもあります。

弁護士にご相談をいただくことで、過去の事例を踏まえて開示請求が認められる可能性が高いかどうかといった見通しのご案内や、開示を避けるためにより適切な回答書や意見書の作成をご依頼いただくことができます。

ルーセント法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷などのトラブルについて、不同意の理由を法的な観点から説明する意見書の作成や、開示が不可避な場合における請求者との示談交渉、訴訟対応などを取り扱っております。開示を避けられたかもしれない状況で不適切な対応により開示されてしまったというケースや、結果的に支払う損害賠償の金額が増えてしまったという事案も散見されます。お困りの際は、是非一度ご相談ください。

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