弁護士コラム

保釈保証金の仮差押

2024.01.25

1.刑事事件の被害回復のために~保釈保証金の仮差押

1.刑事事件の被害回復のために~保釈保証金の仮差押

刑事事件の被害者になってしまったときに、被害者は、被疑者・被告人(刑事事件の加害者)に対して損害賠償請求をすることができます。
加害者が犯行を認め反省しているようなケースであれば、加害者からの示談の申し入れを受けることで、被害者からの損害賠償請求についても同時に解決となる場合が多いです。
しかしながら、加害者が犯行を否認しているケースや、反省をしていても被害弁償をするだけの十分な資力がない場合においては、示談の申し入れは期待できず、被害回復のためには被害者は別途、民事訴訟による対応を行わなくてはなりません。
この記事では、加害者が納付した保釈保証金について、仮差押ができないかという観点から、被害者として採り得る手段を検討していきます。

2.そもそも、保釈保証金って?

2.そもそも、保釈保証金って?

逮捕・勾留された加害者が起訴された場合、刑事裁判が終わるまでの間、加害者は拘置所や警察署の留置場で引き続き身柄拘束を受けることになります。これを「被告人勾留」といいます。
もっとも、被告人勾留に関しては、「保釈」の請求ができます。保釈請求が裁判所によって認められた場合、加害者は保釈保証金を納付することで、身柄拘束を解かれます。保釈保証金の相場は、150万円~300万円程度であることが多い傾向にありますが、事案に応じてより高額となるケースもあります。
あなたが、刑事事件の被害者で、「加害者が保釈された」というような話を捜査機関から聞いたのであれば、加害者はまとまった保釈保証金を納付していることがわかります。

3.仮差押って?

3.仮差押って?

示談によって被害弁償を受けられなかった場合、加害者が納付している保釈保証金は被害者にとっては貴重な加害者の財産です。加害者に対する民事訴訟によって判決を取得すれば、被害者は保釈保証金を差し押さえることができます。
しかしながら、民事訴訟にはどうしても一定の時間がかかってしまいますので、その間に加害者の刑事裁判が終われば、保釈保証金は加害者に還付されてしまいます。このような場合に、あらかじめ対象財産の処分を禁止するのが「仮差押」という手続きです。

4.保釈保証金の仮差押についてより詳細な検討(調査・法律構成)

4.保釈保証金の仮差押についてより詳細な検討(調査・法律構成)

残念ながら、保釈保証金の仮差押というのは、常にできるわけではありません。ごく簡単に言えば、「加害者本人が保釈保証金を用意して納付している場合」でなければ仮差押はできません。たとえば、加害者ではない人が保釈保証金を代納している場合や、加害者の弁護人が加害者の親族等から預かった現金を保釈保証金として納付している場合、保釈保証金の納付に代えて保釈保証書を提出している場合等は、仮差押はできません。
では、どのようにすれば仮差押ができる保釈保証金かどうかがわかるのでしょうか?
弁護士は、受任している事件について、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができます。弁護士法23条の2による照会制度といいます。
保釈保証金の仮差押を検討するために、加害者が納付している保釈保証金について、金額や提出者等についての事前調査が必要となります。これは、加害者の刑事事件が係属している地方裁判所又は簡易裁判所宛に照会をすることで回答が得られます。
照会に当たり、「加害者の氏名・フリガナ」、「生年月日」、「罪名」、「起訴年月日」、「事件番号」が必要となります。これらは、被害者から依頼を受けた弁護士が検察庁に確認をすることで回答が得られます。
また、照会によって「①保釈保証金の金額」、「②保釈保証金の提出者の氏名及び住所」、「③保釈保証金納付の方法」、「④受入年月日」、「⑤管理番号」、「⑥身元引受人の氏名及び住所」、「⑦制限住所」、「⑧保証(刑事訴訟法94条3項)の有無及び金額」、「⑨競合する仮差押え、差押えの有無」、「⑩ ⑨が有の場合、その債権者の氏名及び差押金額」について回答が得られます。
通常は、加害者の弁護人が提出者となっている場合が多いように思います。その場合、保釈金返還請求権を有するのは弁護人である(加害者本人は返還請求権を有さない)と考えられますので、仮差押の対象とする債権は、「加害者から弁護人に対する寄託金返還請求権」となります。

5.まとめ

5.まとめ

以上のように、保釈保証金の仮差押は常にできるわけではなく、また弁護士の関与が必要となる難易度の高い手続きです。もっとも、犯罪の被害回復に悩む被害者の方にとって、効果的な解決となる場合もあります。
犯罪被害の回復についてお悩みの方は、ルーセント法律事務所にご相談ください。

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