はじめに
怪我の治療を終え、ようやく保険会社から届いた「示談金額の提示書(計算書)」。内容を開いて、思わず目を疑うことがあります。
「総損害額〇〇万円」という金額の下に、「既払い金〇〇〇万円」という大きなマイナス項目があり、最終的な受取額がぐっと少なくなっている――。
「えっ、こんなに引かれるの?」
「私、何か損をしているんじゃないか……?」
専門用語が並ぶ書類を前に、不安を感じるのは当然のことです。
ですが、どうかご安心ください。結論から言うと、「既払い金」が差し引かれること自体は、あなたが損をしているわけではありません。
ただし、その裏にある「保険会社の計算の仕組み」を知らないと、本当の意味で損をしてしまう大きな落とし穴が潜んでいます。
この記事では、交通事故の示談書によく出てくる「既払い金」の正体と、絶対に確認すべきポイントを弁護士が分かりやすく解説します。
そもそも「既払い金」って何のお金?
既払い金とは、文字通り「保険会社が、示談する前にすでに支払った(立て替えてくれた)お金」のことです。
交通事故の賠償金は、本来であれば「すべての治療が終わり、示談が成立した後に一括で支払われる」のが原則です。
しかし、ケガの治療が数ヶ月〜半年以上に及ぶ場合、その間の治療費をすべて被害者が自腹で払い続けるのは現実的ではありません。
そこで、保険会社が「最終的な賠償金の中から、今必要な分を先に払っておきますね」として、示談前に支払ってくれたお金が「既払い金」となります。
どんなものが「既払い金」に含まれる?
具体的には、以下のようなものが既払い金として計算書に載ってきます。
病院への治療費
保険会社が、あなたに代わって病院へ直接支払った診察代や手術代(通常のケースではこれが一番大きな金額になります)
休業損害の内払い
ケガで仕事を休んだ間の生活費として、示談前に振り込まれたお金
交通費や診断書代
通院にかかったタクシー代や書類代で、すでに精算してもらった分
自賠責保険からの仮渡金
当面の資金として、自賠責から先に受け取ったお金
なぜ「賠償金(示談金)」から差し引かれるの?
示談書に書かれている「総損害額」というのは、「今回の事故であなたに発生した、すべての損害の合計(治療費、慰謝料、休業損害などすべて)」です。
たとえば、あなたの損害の総額が300万円だったとします。
もし、治療期間中に保険会社が病院へ100万円を直接支払ってくれていた場合、その100万円は、すでにあなたの損害をカバーするために使われたことになります。
- 総損害額: 300万円
- 既払い金: ▲100万円(すでに病院へ支払い済み)
- 今回の受取額: 200万円
このように、「二重取り」を防ぐために精算しているだけですので、既払い金が引かれること自体は正常な手続きです。あなたが損をしているわけではありません。
損をしていないかチェック!2つの落とし穴
「引かれるのは当たり前」とはいえ、そのまま示談書にハンコを押すのは危険です。損害額計算書を見たときは、以下の2点に要注意です。
落とし穴①:大元の「総損害額(慰謝料など)」が安すぎる
既払い金の引き算自体は正しくても、大元となる「総損害額」が、保険会社独自の低い基準(任意保険基準)で計算されていることがほとんどです。
たとえば、総損害額が300万円と提示されても、弁護士が適正な基準(裁判所基準)で計算し直すと、慰謝料などが大幅に増額し、総額が500万円に跳ね上がることがあります。
- 保険会社提示: 300万円 − 100万円(既払い)= 受取額200万円
- 弁護士の再計算: 500万円 − 100万円(既払い)= 受取額400万円
既払い金があるからといって、手元に残る金額が少ないと諦める必要はありません。
大元の総損害額が正当かどうかが、すべての鍵を握っています。
落とし穴②:あなたにも「過失」がある場合
事故の発生について、自分にも落ち度(過失)があると判断された場合、賠償金はその割合分だけカットされます。
この時、保険会社が支払った「高額な治療費」が既払い金として引かれることで、「過失相殺の結果、あなたに支払われる示談金がごく少額になる(ゼロ和解/持ち出しになる)」ケースが少なくありません。
特に、過失割合で争っている場合は、手元に残る金額が大きく変わりますので、必ず弁護士に確認してください。
サインをする前に、必ず一度立ち止まってください
「既払い金があるから、残りの受取額が少なくても仕方ない」と、届いた示談書にそのままサインをしてしまう方が非常に多いです。
しかし、一度示談が成立してしまうと、後から「本当はもっともらえたはずなのに」と気づいても、二度と覆すことはできません。
ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、交通事故被害者の方々の示談金増額交渉に多くの実績があります。
保険会社から届いた計算書の見方が分からない、あるいは提示された金額に納得できない場合は、そのままサインせずに、まずは当事務所へご相談ください。
初回相談は無料で、お手元の計算書が本当に適正かどうか、私たちが無料で診断いたします。あなたの正当な権利を守るために、ぜひ一度お電話ください。
