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- 保険会社から弁護士費用特約を使えないと言われた
弁護士特約が「使えない」と言われたら?諦める前に確認すべきこと
「交通事故に遭ったので、弁護士に相談したい。保険の弁護士特約を使おうとしたら、保険会社に『このケースでは使えません』と断られてしまった…」
「特約を使えると思っていたのに、なぜ断られたのか理由がよく分からない…」
弁護士費用特約(以下「弁護士特約」)は、交通事故の被害者・加害者が、弁護士への相談・依頼費用を保険でカバーできる非常に便利な制度です。しかし、いざ利用しようとした際に、保険会社の担当者から利用を断られてしまうケースが、残念ながら存在します。
保険会社の説明が常に正しいとは限りません。「使えない」と言われたからといって、すぐに諦める必要はありません。本当に使えないのか、それとも利用できる可能性があるのか、確認すべき点と対処法を知っておきましょう。
弁護士特約が「使えない」とされる主なケース(保険約款上の主な免責事由)
弁護士特約が利用できるかどうかは、ご加入の保険契約の「約款(やっかん)」に定められた条件によります。一般的に、以下のようなケースでは、特約の対象外(免責事由)とされていることが多いです。
ご自身の故意または重大な過失による事故
ご自身に意図的な行為(故意)や、著しく不注意な運転(重大な過失)があったとされる事故では、特約が使えない場合があります。
- 例: 無免許運転、飲酒運転、薬物使用中の運転、著しい速度超過、危険運転(あおり運転など)による事故など。
単なる脇見運転や軽微な速度超過程度であれば、「重大な過失」とまでは言えず、特約が利用できる可能性はあります。
自動車・バイクが関係しない事故(※契約内容による)
ご加入の弁護士特約が「自動車事故」に関するものに限定されている場合、自動車やバイク(原動機付自転車含む)が全く関与しない事故は対象外となります。
- 例: 自転車同士の事故、自転車と歩行者の事故、歩行者同士の接触など。
- ポイント:ただし、自動車保険とは別に、火災保険や傷害保険などに「日常生活弁護士費用特約」が付帯されている場合は、これらの事故も補償対象となる可能性があります。
仕事中の事故(事業用車両での事故など)
会社の車(営業車、トラックなど)を運転中や、業務として自動車を運転している際の事故については、労災保険が適用されるべきという考え方から、弁護士特約の対象外となる場合があります。(※個人事業主の方などの場合は契約によります)
ごく近しい親族間の事故
特約の対象となる自動車の所有者や運転者、そのご家族(配偶者、同居の親族、別居の未婚の子など)の間で起きた事故については、補償の対象外となるのが一般的です。
- 例: 夫が運転する車に妻が同乗していて事故に遭った場合、妻が夫に対して損害賠償請求をするために弁護士特約を使うことは原則できません。
自然災害(地震・噴火・津波など)による事故
地震、噴火、またはこれらによる津波によって生じた損害については、通常、弁護士特約の対象外となります。台風、洪水、高潮などは契約によって扱いが異なる場合があります。
事故発生後に弁護士特約を付帯した場合
弁護士特約は、保険契約期間中に発生した事故について適用されるものです。事故が発生した後に、慌てて弁護士特約を付けても、その事故について遡って利用することはできません。
「使えない」と言われても、実は使えるかもしれないケース
上記のような明確な免責事由に該当しないにも関わらず、保険会社から利用を断られたり、利用をためらわせるような説明を受けたりするケースもあります。以下のような場合は、諦めずに利用できるか再確認しましょう。
自分に過失がない「もらい事故」(過失割合 0:100)

追突された場合など、ご自身に全く過失がない事故では、ご自身の保険会社は相手方との示談交渉を代行することができません(非介入)。そのため、被害者自身で相手方(の保険会社)と交渉する必要があります。このような交渉が困難なケースこそ、弁護士に依頼するメリットが大きく、弁護士特約を利用すべき場面と言えます。保険会社によっては「過失がないなら保険会社は関係ない」といった説明をする場合もあるようですが、弁護士特約の利用は可能です。
加害者と被害者が同じ保険会社の場合

事故の当事者双方が同じ保険会社(または同じグループ会社)に加入している場合、保険会社が双方の代理人となることは利益相反(一方の利益が他方の不利益になる)となるため、示談交渉を積極的に行えないことがあります。そのような状況を理由に「弁護士特約は使いにくい」といった説明をされることがあっても、約款上、特約の利用が制限されるわけではありません。むしろ、中立な立場での交渉が期待できないからこそ、被害者が自身の代理人として弁護士を立てる必要性が高いケースと言えます。
「軽傷だから」「費用倒れになるから」などと言われた場合
保険会社にとっては、弁護士特約を利用されると弁護士費用を負担する必要が生じます。そのため、担当者によっては「怪我が軽いので、弁護士を立てる必要はないですよ」「弁護士費用の方が高くつく(費用倒れになる)かもしれませんよ」などと言って、特約の利用を控えさせようとするケースがあるようです。 しかし、弁護士特約を利用するかどうかは契約者であるご自身の権利です。たとえ軽傷に見えても、後遺障害が残る可能性や、慰謝料が弁護士基準で増額する可能性はあります。費用倒れの心配は、弁護士費用特約を使えば基本的にありません(※)。保険会社の言葉を鵜呑みにせず、利用を検討しましょう。
(※)弁護士費用が特約の上限額(通常300万円)を超えるような極めて例外的なケースを除きます。
保険会社に「弁護士特約は使えない」と言われた時の対処法
ご自身の保険証券・約款を確認する
まずは、ご自身が加入している保険の契約内容(保険証券や約款)を確認し、「弁護士費用特約」の補償範囲や免責事由(適用されない場合)の記載を直接読んでみましょう。保険会社のウェブサイトで確認できる場合もあります。
保険会社に「使えない具体的な理由」と「該当する約款の条文」を確認する
電話などで担当者に、「なぜ使えないのか、具体的な理由」と、「その根拠となる約款のどの条項に該当するのか」を明確に説明してもらいましょう。曖昧な説明しかできない場合は、担当者の誤解や不適切な案内の可能性も考えられます。
ご家族が加入している保険も確認する
弁護士特約は、記名被保険者(契約者)本人だけでなく、その配偶者、同居の親族、別居の未婚の子などが利用できる場合が多いです。ご自身の保険で使えなくても、ご家族が加入している他の自動車保険や火災保険などに弁護士特約が付帯されていないか確認してみましょう。
弁護士に相談する
約款を読んでもよく分からない場合や、保険会社の回答に納得できない場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみましょう。弁護士は、約款の内容を法的な観点から解釈し、特約が利用できる可能性があるかどうかを判断できます。また、もし保険会社の判断が誤っていると考えられる場合には、弁護士から保険会社に説明を求めることも可能です。
- ポイント:弁護士への「相談」自体が弁護士特約の対象となる場合も多いので、まずは相談してみることをお勧めします。
弁護士特約は被害者の権利です。諦めずにご相談を!

弁護士費用特約は、交通事故の被害者が、費用の心配なく専門家である弁護士のサポートを受け、適正な賠償を得るための重要な制度です。保険会社の説明が必ずしも正しいとは限りません。「使えない」と言われた場合でも、すぐに諦めずに、ご自身の契約内容を確認し、必要であれば弁護士に相談することが大切です。
ルーセント法律事務所では、交通事故に関するご相談を数多くお受けしており、弁護士費用特約の利用に関するアドバイスも行っております。
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