弁護士コラム

【徹底解説】犯罪収益移転防止法の改正で新設された「送金犯罪」とは?
闇バイトで加害者にならないための知識

2026.07.23

はじめに

はじめに

近年、SNSやインターネットを通じて

 

「スキマ時間で稼げる」

「簡単な送金代行のお仕事です」

 

といった甘い言葉で募集される、いわゆる「闇バイト(副業詐欺)」が社会問題化しています。

 

「自分の口座にお金が振り込まれるので、それを別の口座に送金するだけ。それだけで報酬がもらえる」

このような誘いに乗り、軽い気持ちで送金作業を行ってしまった結果、ある日突然警察に逮捕されたり、すべての銀行口座が凍結されたりして、人生が根底から覆ってしまう人が急増しています。

こうした「資金移動役(マネー・ミュール)」による被害の拡大を食い止めるため、「犯罪収益移転防止法(犯収法)」が大きく改正され、新たに「送金」に関する厳しい処罰規定(送金犯罪)が設けられました。

この記事では、法改正によって何が犯罪となったのか、なぜ法改正が必要だったのか、そして万が一巻き込まれてしまった場合にどうすべきかを、弁護士が分かりやすく徹底解説します。

1.なぜ「送金犯罪」が新設されたのか?

そもそも「犯罪収益移転防止法(正式名称:組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律、ならびに犯罪収益移転防止法)」とは、テロリストや詐欺グループなどの犯罪組織に資金が流れること(マネー・ロンダリング=資金洗浄)を防ぐための法律です。

 

これまでの法律でも、「自分名義のキャッシュカードや通帳、暗証番号を他人に売る・譲り渡す行為」は、同法第28条などで厳しく処罰されてきました。

口座売買は立派な犯罪であるという認識は、広く社会に浸透してきています。

 

しかし、近年急増している「SNS型投資詐欺」や「ロマンス詐欺」、そして「特殊詐欺」の犯罪グループは、法律の抜け穴を突くようになりました。

彼らは、口座そのものを買い取るのではなく、「口座の名義人本人に、自分のスマートフォンやパソコン(インターネットバンキング)を操作させて、振り込まれた詐欺の被害金を次々と別の口座や暗号資産(仮想通貨)取引所へ送金させる」という手口を使い始めたのです。

 

これがいわゆる「資金移動役(マネー・ミュール)」です。

従来の法律では、本人が自分の口座を自分で操作しているだけであれば、「口座を他人に譲渡した」という要件に当てはまらず、犯収法違反で逮捕することが困難でした。

また、「これが詐欺のお金だとは知らなかった(ただの副業だと思っていた)」と主張されると、詐欺罪の共犯として立件するハードルも非常に高かったのです。

こうした捜査の壁を取り払い、詐欺グループの資金洗浄ネットワークを根本から断つために行われたのが今回の法改正です。

「詐欺のお金だと知っていたかどうか」に関わらず、「正当な理由なく、他人の依頼を受けて、自分の口座を使って反復・継続して送金等の業務を行うこと」そのものをダイレクトに犯罪として処罰できるようになりました。

2.新設された送金犯罪で「違法となる具体的な行為」とは?

法改正により、具体的にどのような行動が「送金犯罪」として処罰の対象となるのでしょうか。

最大のポイントは、「正当な理由がないのに」「他人の求めに応じて(指示を受けて)」「資金の受け渡しや送金を行うこと」です。

 

以下に、知らず知らずのうちに犯罪に手を染めてしまう典型的なケースを挙げます。

ケース①:「売上金の回収代行」を名乗る副業・アルバイト

SNSや求人サイトで「当社は海外に拠点があり、日本の顧客からの売上金を受け取るための日本の口座が必要です。

あなたの口座で売上金を受け取り、指定する口座へ振り込んでくれたら、受け取った金額の5%を報酬として差し上げます」と持ちかけられるケースです。

自分の口座に見知らぬ個人名義から数十万円が振り込まれ、それを指示された別の口座へ送金します。

これは完全に「マネー・ミュール(資金洗浄の片棒担ぎ)」であり、新設された送金犯罪に直結する極めて危険な行為です。

振り込まれてくるお金は、すべて詐欺の被害者が騙し取られた被害金です。

ケース②:暗号資産(仮想通貨)の「購入・送金代行」

「節税対策のため」「投資枠を広げるため」といったもっともらしい理由で、「あなたの口座にお金を振り込むので、そのお金で暗号資産(ビットコインなど)を購入し、指定するウォレット(アドレス)に送付してください」と依頼されるケースです。

現金での送金よりも足がつきにくいため、犯罪グループが好んで使う手口です。

これも他人の依頼による不正な資金移動にあたり、厳しい処罰の対象となります。

ケース③:「引き出し役(出し子)」としての行為

自分の口座に振り込まれたお金を、ATMで現金として引き出し、それを指示された人物に手渡ししたり、コインロッカーに入れたりする行為です。

送金に限らず、こうした不正な現金の受け渡しも、資金洗浄を幇助する犯罪行為として処罰されます。

※「正当な理由」とは何か?

もちろん、家族に仕送りを頼まれて代わりに送金したり、友人の分のチケット代を立て替えてもらって後で振り込んだりといった、日常生活における一般的なお金のやり取りは「正当な理由」があるため犯罪にはなりません。

問題となるのは、見ず知らずの第三者から、事業やビジネスとしての実態がないにもかかわらず、報酬目当てで反復・継続して送金の依頼を受けることです。

3.送金犯罪に手を染めてしまった場合の「3つの巨大なリスク」

「ただ送金ボタンを押しただけ」「詐欺だとは本当に知らなかった」そのような言い訳は、警察にも裁判所にも一切通用しません。

送金犯罪の被疑者となってしまった場合、人生を破滅させる3つの巨大なリスクが待ち受けています。

① 刑事罰(逮捕・前科のリスク)

新設された規定や関連法令により、重い懲役刑や罰金刑が科せられます。

さらに恐ろしいのは、警察の捜査が進む中で「詐欺だと薄々気づいていたのではないか(未必の故意があった)」と判断された場合、単なる犯収法違反ではなく、「詐欺罪の共犯(幇助)」や「組織的犯罪処罰法違反」という極めて重い罪に切り替わることです。

詐欺罪には罰金刑がなく、起訴されれば実刑(刑務所行き)になる可能性が十分にあります。

② すべての銀行口座の「凍結(強制解約)」

警察や銀行が不正な送金を検知すると、「振り込め詐欺救済法」に基づき、犯罪に使われた口座は即座に凍結されます。

さらに、警察庁のデータベースに「口座を不正利用した要注意人物」としてあなたの名前が登録されると、全国の銀行に情報が共有されます。

その結果、犯罪に使っていない他の銀行の口座(給与振込口座や生活費の口座)も含め、あなたが持っているすべての口座が連鎖的に凍結・強制解約されるリスクが極めて高いのです。

一度このブラックリストに載ると、今後数年間にわたって新しく口座を開設することができなくなり、給与の受け取りや家賃の引き落とし、クレジットカードの作成などが一切できず、これまで通りの社会生活を送ることが事実上不可能になります。

③ 被害者からの「巨額の損害賠償請求」

あなたに送金を指示した詐欺グループの黒幕は、海外にいたり匿名性の高い通信を使っていたりするため、簡単には捕まりません。

そうなった場合、お金を騙し取られた被害者の怒りの矛先は、「振込先として口座の名前が残っているあなた」に向かいます。

被害者から弁護士を通じて、「私の騙し取られた数百万、数千万円を返せ」と民事訴訟を起こされることになります。

「自分は報酬として数千円しかもらっていない」と主張しても、被害者から見ればあなたは立派な加害者の一員であり、裁判所も全額の賠償責任を認める判決を出すことが通常です。

4.もし送金代行(闇バイト)に関わってしまったら、どうすべきか?

この記事を読み、「もしかして、今自分がやっている副業は犯罪かもしれない……」と気づいた方は、一刻の猶予もありません。

直ちに以下の行動をとってください。

1.絶対に、これ以上の送金・引き出しを行わない

「あと1回やらないと違約金を取る」「家族に危害を加える」と脅されたとしても、絶対に従ってはいけません。

相手は犯罪者です。送金を続ければ続けるほど、あなたの罪は重くなり、被害額も膨れ上がります。

2.口座の中にあるお金には絶対に手をつけない

振り込まれたお金は、詐欺の被害者の大切なお金です。

「自分の口座にあるから」と勝手に引き出して使ってしまえば、今度はあなたが横領罪や窃盗罪に問われることになります。

そのままの状態で一切手を触れないでください。

3.警察へ行く前に、直ちに弁護士に相談する

「怖くなって警察に飛び込んだら、その場で逮捕されてしまった」というケースは非常に多くあります。

逮捕されれば、会社や学校に行けなくなり、人生に大きな傷がつきます。

まずは刑事事件に精通した弁護士に相談してください。

弁護士が事実関係を整理し、あなたが「騙されて利用された側」であることを法的に主張する準備を整えた上で、弁護士付き添いのもとで警察へ出頭(自首)することで、逮捕を回避し、在宅での捜査(身柄を拘束されずに日常生活を送りながら取り調べを受けること)に持ち込める可能性が高まります。

5.まとめ:取り返しのつかない事態になる前にご相談を

5.まとめ:取り返しのつかない事態になる前にご相談を

「少しでも生活の足しにしたい」

「簡単に稼げるなら」

という人間のささやかな隙につけ込み、一般の市民を使い捨ての「犯罪の道具」として利用する詐欺グループの手口は、日々悪質化しています。

犯罪収益移転防止法の改正により、警察の取り締まりはかつてないほど厳格化しています。「知らなかった」という言い訳で逃げ切ることは不可能です。

 

ルーセント法律事務所(兵庫県宝塚市)では、意図せず闇バイトや詐欺の片棒を担がされてしまった方からの刑事事件に関するご相談を承っております(非常に多くのご相談をいただいているため、現在ではご相談の対象を、「警察への自首を検討している方」・「被害者が依頼した弁護士から損害賠償請求の通知が届いている方」・「裁判所から訴状が届いている方」に限らせていただいております。それ以外のお問い合わせはご対応いたしかねますのでご容赦ください)。

 

「警察から事情聴取の呼び出しの電話がかかってきた」

「被害者が依頼した弁護士や裁判所から通知や訴状が届いた」

そういった絶望的な状況にあっても、弁護士が迅速に介入することで、被害者への謝罪と返金(示談交渉)、警察への適切な対応を行い、あなたへの処分を最小限に抑え、今後の人生を立て直すための防波堤となります。

一人で悩まず、手遅れになる前に、今すぐ当事務所の法律相談をご利用ください。私たちが、全力であなたの未来を守るための解決策をご提案いたします。

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