はじめに:
「やろうとしたけど、うまくいかなかった」は罪になる?
「盗みに入ろうとしたが、警報が鳴ったので逃げた」
「相手を殴ろうとこぶしを振り上げたが、周りに止められた」
「ナイフで刺したが、幸いにも命に別状はなかった」
このように、犯罪を実行しようとしたものの、何らかの理由で結果(=既遂)に至らなかった場合、「未遂」となります。
「結果が出ていないのだから、罪にはならない」あるいは「罪になったとしても、既遂よりはるかに軽くなるだろう」と、安易に考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それは大きな誤解です。日本の刑法では、多くの犯罪で「未遂罪」そのものが処罰の対象とされています。
この記事では、「未遂罪」とは何か、その成立要件、そして、未遂罪の中でも刑罰が大きく変わる2つのパターンと、弁護士の専門的な弁護活動がなぜ不可欠なのかについて、分かりやすく解説します。
未遂罪が成立する鍵:「実行の着手」とは
未遂罪は、「犯罪を実行しようとした」全てのケースで成立するわけではありません。例えば、「明日、あの店に盗みに入ろう」と計画し、道具を準備しただけでは、まだ未遂罪にはなりません。
未遂罪が成立するためには、「実行の着手」があったと認められる必要があります。
実行の着手とは?
非常に難しい法律用語ですが、簡単に言えば、「犯罪の結果発生に、客観的に見て直接的な危険のある行為を開始した」時点を指します。
- 窃盗罪:金庫に手をかけた、レジを開けようとした、家の窓ガラスを割り始めた。
- 殺人罪:ナイフを相手に向けて突き出した(あるいは拳銃を発砲した)時点。
- 強盗罪:相手に暴行・脅迫を開始した時点。
この「実行の着手」があったかどうかは、事件ごとの具体的な状況によって判断が分かれる、法的に極めて専門的な争点となります。
未遂には2種類ある!「障害未遂」と「中止未遂」
同じ未遂であっても、なぜ犯罪が達成されなかったのか、その理由によって、法律上の扱いは天と地ほど変わります。
① 障害未遂(しょうがいみすい)
犯罪を成し遂げたかったが、自分の意思以外の「外部的な障害」によって、やむを得ず結果の発生が妨げられたケースです。
【具体例】
- 「金庫を開けようとしたら、警備員に見つかって逃げた」
- 「ピストルを撃ったが、弾が外れて相手は無傷だった」
- 「被害者が強く抵抗したため、何も盗れなかった」
② 中止未遂(ちゅうしみすい)
犯罪の実行に着手したが、「自分の意思で」犯罪を中止した、または、結果の発生を自らの行為で防いだケースです。
【具体例】
- 「金庫を開けたが、『やはり悪いことだ』と自ら反省し、何も取らずに立ち去った」
- 「相手をナイフで刺したが、直後に『大変なことをしてしまった』と自ら救急車を呼び、命を救った」
刑罰はどう変わる?「中止未遂」の絶大な効果
この2つの未遂は、刑罰の重さに決定的な違いをもたらします。
障害未遂の場合
刑法では、刑を「減軽することができる」と定められています(任意的減軽)。
つまり、裁判官の判断で、既遂罪と同じ刑になることもあれば、軽くされることもあります。
「未遂だから必ず軽くなる」わけではありません。
中止未遂の場合
刑法では、刑を「減軽し、または免除する」と定められており、これは必ず(義務的)行わなければなりません(必要的減免)。
自ら犯罪の危険を取り除いた行為を法律が高く評価しているためです。
刑が大幅に軽くなったり、場合によっては刑罰自体が免除されたりする可能性があり、執行猶予を勝ち取る上で極めて強力な事情となります。
未遂罪の弁護こそ、弁護士の腕の見せ所
「未遂だから」と安易に考えるべきではありません。
むしろ、未遂事件には、弁護士が専門的な主張を行うことで、あなたにとって有利な結果を導き出せる可能性が、既遂事件以上に秘められています。
1.「実行の着手」がなかった(=無罪)と主張する
弁護士は、事件の状況を詳細に分析し、「まだ計画や準備の段階であり、法的な『実行の着手』には至っていない」と主張できる可能性を探ります。
この主張が認められれば、未遂罪すら成立せず、「無罪」となる可能性があります。
2.「中止未遂」であったことを説得的に主張する
捜査機関は、多くの場合、「怖くなって逃げただけ(障害未遂)」と判断しがちです。
しかし、弁護士は、あなたの行動を詳細に分析し、「外部的な障害ではなく、自らの反省や良心の呵責によってやめたのだ」という「中止未遂」の主張を、法的に構成し、裁判官に説得的に主張します。
これが認められるかどうかで、刑罰は劇的に変わります。
3.示談交渉を迅速に行う
未遂であっても、被害者に恐怖を与えたり、怪我を負わせたりした場合、その精神的苦痛は甚大です。
弁護士が迅速に被害者との示談交渉を進め、被害弁償と謝罪を尽くすことで、障害未遂であったとしても、刑の減軽や執行猶予を目指します。
「未遂だから」と軽く考えず、まずは専門家へご相談を
未遂事件は、「実行の着手」の有無、「中止未遂」か「障害未遂」か、といった、法律の専門家でなければ判断が難しい、極めてデリケートな論点を多く含んでいます。
もし、あなたが犯罪の未遂の疑いをかけられてしまったら、「うまくいかなかったのだから大丈夫」などと決して安易に考えず、一刻も早く、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、このような複雑な刑事事件の弁護活動に豊富な経験がございます。
初回のご相談は無料です。あなたの未来への不利益を最小限に食い止めるため、法的な観点から最善の弁護活動を行います。


