弁護士コラム

痴漢事件の示談金・慰謝料の相場は?
不起訴・前科回避のために弁護士ができること

2025.12.11

はじめに:痴漢事件、その瞬間の過ちが生涯の重荷に

はじめに:痴漢事件、その瞬間の過ちが生涯の重荷に

満員電車や駅の構内などで、一時の衝動を抑えきれず痴漢行為をしてしまった

その場で被害者や周囲の人に取り押さえられ、駅員室や警察署に連れて行かれた場合、あなたは強い恐怖と混乱、そして深い後悔の念に苛まれていることでしょう。

 

痴漢行為は、各都道府県の迷惑防止条例違反や、態様によってはより重い「不同意わいせつ罪」に問われる、れっきとした犯罪です。

逮捕・勾留され、起訴されて有罪になれば、懲役刑や罰金刑、そして「前科」という重いペナルティが科されます。

 

しかし、痴漢事件は、逮捕された直後から、いかに迅速かつ誠実な対応をとるかによって、その後の運命が大きく変わる犯罪類型でもあります。

そして、その鍵を握るのが、被害者の方への謝罪と賠償、すなわち「示談」の成立です。

この記事では、痴漢事件における慰謝料・示談金の相場と、その金額が決まる要因、そして、なぜ一刻も早い弁護士への依頼があなたの未来を守るために不可欠なのかを、分かりやすく解説します。

「慰謝料」と「示談金」の違いは?

示談交渉の場面では、「慰謝料」と「示談金」という言葉がよく使われますが、以下のように理解しておくとよいでしょう。

  • 慰謝料
    痴漢行為によって被害者が受けた精神的苦痛(恐怖心、屈辱感など)に対する損害賠償金のことです。
  • 示談金
    上記の慰謝料に加えて、被害届を取り下げてもらうための迷惑料や、被害者の貴重な時間を奪ってしまったことへの謝意などを含めた、事件全体を法的に解決するためのお金(解決金)を指すことが多いです。

 

実務上は、示談金の中に慰謝料が含まれている、と考えるのが一般的です。

痴漢事件の示談金の相場は?

まず大前提として、慰謝料・示談金の額に、法律で定められた一律の基準はありません。

最終的には、加害者と被害者の間の話し合い(交渉)や民事裁判によって決まります。

その上で、あくまで一般的な目安、いわゆる「相場」としては、以下のように言われることが多いです。

一般的な痴漢事件(迷惑防止条例違反)の示談金の相場

30万円 ~ 50万円程度(目安)

 

ただし、これはあくまで電車内などで服の上から短時間触れた、といった比較的軽微な条例違反のケースの目安です。次にご説明するように、事件の態様によっては、この金額は大きく変動します。

相場が変動する要因(高額になるケース)

上記の目安額は、様々な事情によって大きく変わります。特に、以下のような事情がある場合、被害者の精神的苦痛はより大きいと判断され、示談金は高額になる(50万円~100万円、あるいはそれ以上)傾向があります。

  • 行為態様の悪質性(「不同意わいせつ罪」にあたる場合)
    服の上から触る程度ではなく、服の中に手を入れる、下着の中に手を入れる、胸や性器を直接触るといった行為は、迷惑防止条例違反ではなく、法定刑の重い「不同意わいせつ罪(6月以上10年以下の懲役)」に該当します。この場合、被害者の精神的苦痛は甚大であり、示談金は100万円を超えることも珍しくありません。
  • 犯行の執拗さ・時間
    一度だけでなく何度も触ったり、長時間にわたって行為が及んだりした場合。
  • 被害者の年齢
    被害者の方が未成年者(特に中学生や高校生など)である場合、その精神的ショックの大きさや、将来への影響が考慮され、示談金は高額になる傾向があります。
  • 被害者の処罰感情の強さ
    被害者の方の怒りや恐怖心、「絶対に許せない」という処罰を望む気持ちが強ければ、示談交渉は難航し、金額も高くなる傾向にあります。
  • 加害者の社会的地位や前科
    加害者が教師や公務員など、特に高い倫理観を求められる立場であった場合や、過去にも同様の前科・前歴がある場合、示談金額が高くなる要素となり得ます。

なぜ示談交渉は弁護士に依頼しなければならないのか

「相場が分かったから、自分で交渉しよう」と思っても、通常、これは不可能です。
痴漢事件の示談交渉は、当事者同士で行うことはできません。その理由は以下の通りです。

1.被害者の連絡先を知ることができない

警察や検察は、被害者のプライバシーと安全を守るため、加害者本人やその家族に、被害者の連絡先(電話番号や住所)を教えることはありません。

弁護士が「守秘義務を負う代理人」として間に入ることで、初めて捜査機関を通じて、被害者側に示談の申し入れを行うことが可能になります。

2.被害者の感情を逆なでし、交渉決裂を招く

もし仮に何らかの形で連絡が取れたとしても、加害者本人が被害者に直接接触することは、被害者にさらなる恐怖心や怒りを与える「二次被害」となりかねません。

「反省していない」と受け取られ、示談交渉は即座に決裂し、かえって被害者の処罰感情を強めてしまうでしょう。

特に、捜査中の事件について加害者が被害者に接触すると、証拠隠滅や被害者への不当な働きかけを行っていると判断され、逮捕の理由となる場合もあります。

3.適正な金額での交渉と、法的に有効な示談書の作成

弁護士は、上記のような相場観や事件の悪質性を踏まえ、適正な金額での解決を目指して冷静に交渉します。

そして、示談が成立した際には、「被害届を取り下げる」「加害者の刑事処罰を望まない(宥恕する)」「これ以上の請求はしない(清算条項)」といった、あなたの未来を守るために不可欠な条項を盛り込んだ、法的に有効な示談書を作成します。

示談が刑事処分に与える絶大な効果

弁護士を通じて示談を成立させることには、刑事手続きにおいて計り知れないメリットがあります。

❶不起訴処分の可能性が格段に高まる
検察官が処分を決める際、被害者との示談が成立し、被害者が処罰を望んでいない(宥恕している)という事実は、最も重要な判断材料となります。
これにより、起訴を見送る(不起訴処分)可能性が飛躍的に高まります。不起訴になれば、裁判は開かれず、前科もつきません。
❷逮捕・勾留からの早期釈放
逮捕・勾留されている場合でも、弁護士が迅速に示談を成立させることで、「被害者も許しており、逃亡や証拠隠滅のおそれもない」として、検察官や裁判官が早期の身柄解放(釈放)を認める可能性が高まります。
❸刑の減軽・執行猶予につながる
万が一、起訴されてしまった場合(特に不同意わいせつ罪など)でも、示談が成立していることは、裁判官が刑の重さを決める上で、被告人に最も有利な事情として考慮され、刑の減軽や執行猶予付き判決につながりやすくなります。

示談交渉は時間との勝負です

示談交渉は時間との勝負です

痴漢事件を起こしてしまった場合、あなたの人生が「前科」によって大きく変わってしまうかどうかの分かれ道は、いかに早く弁護士に依頼し、被害者の方との示談交渉を開始できるかにかかっています。

時間が経てば経つほど、捜査は進み、被害者の処罰感情も固まってしまいます。

ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、痴漢事件を含む刑事事件の示談交渉に豊富な経験がございます。

ご相談は秘密厳守です。初回のご相談は無料ですので、もし過ちを犯してしまい、深く後悔されているのであれば、取り返しのつかないことになる前に、一刻も早く私たちにご相談ください。

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