弁護士コラム

盗撮事件の示談金・慰謝料の相場は?
弁護士が解説する金額の決まり方と交渉の重要性

2025.12.02

はじめに:盗撮事件、逮捕や刑罰だけが問題ではない

はじめに:盗撮事件、逮捕や刑罰だけが問題ではない

一時の出来心で盗撮行為をしてしまった…。

その場合、撮影罪などの「刑事罰」を受ける可能性があることはもちろんですが、それと同時に、被害者の方の心の尊厳を深く傷つけたことに対する「民事上の責任」、すなわち損害賠償(慰謝料・示談金)の支払いを求められることになります。

そして、この被害者の方との示談が成立するかどうかは、あなたが受ける刑事処分の重さ、特に「前科」がつくかどうかに直結する、極めて重大な分岐点となります。

 

「いったい、いくら支払えば許してもらえるのだろうか…」
「相場はどれくらいなのか…」

 

この記事では、盗撮事件における慰謝料・示談金の相場と、その金額が決まる要因、そして、なぜ示談交渉は弁護士に依頼しなければならないのかについて、分かりやすく解説します。

「慰謝料」と「示談金」との違いは?

示談交渉の場面では、「慰謝料」と「示談金」という言葉がよく使われますが、以下のように理解しておくとよいでしょう。

  • 慰謝料
    盗撮行為によって被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。
  • 示談金
    上記の慰謝料に加えて、被害届を取り下げてもらうための迷惑料や、捜査に協力してもらったことへの謝意などを含めた、事件全体を解決するためのお金(解決金)を指すことが多いです。

 

実務上は、示談金の中に慰謝料が含まれている、と考えるのが一般的です。

盗撮事件の示談金の相場は?

まず大前提として、慰謝料・示談金の額に、法律で定められた一律の基準はありません。

最終的には、加害者と被害者の間の話し合い(交渉)か民事裁判によって決まります。

その上で、あくまで一般的な目安、いわゆる「相場」としては、以下のように言われることが多いです。

一般的な盗撮事件の示談金の相場

10万円 ~ 50万円程度(目安)

 

ただし、これは駅のエスカレーターなどで着衣のまま撮影した、といった比較的典型的なケースの目安です。

次にご説明するように、事件の悪質性によっては、この金額は大きく変動します。

相場が変動する要因(高額になるケース)

上記の目安額は、様々な事情によって大きく変わります。

特に、以下のような事情がある場合、被害者の精神的苦痛はより大きいと判断され、示談金は高額になる(50万円~100万円、あるいはそれ以上)傾向があります。

  • 盗撮場所の悪質性
    駅のホームやエスカレーターなどに比べ、トイレ、更衣室、浴場など、通常、人が衣服を身につけていない場所での盗撮は、プライバシーの侵害の程度が格段に高く、極めて悪質と判断されます。
  • 撮影された内容
    着衣の上からの撮影か、それとも下着や裸体が撮影されているのか。後者の方が、当然ながら被害は甚大です。
  • 被害者との関係性
    見ず知らずの他人ではなく、職場の同僚、上司・部下、友人、親族など、顔見知りであった場合、信頼関係を裏切られたことによる精神的ショックは計り知れず、示談金は高額になりがちです。
  • 盗撮の期間・回数(常習性)
    一度きりの出来心ではなく、長期間にわたって何度も盗撮を繰り返していた場合、悪質性が高いとされます。
  • データの拡散の有無
    撮影したデータをインターネット上にアップロードしたり、第三者に送信したりした場合、被害は回復不可能なレベルまで拡大するため、示談金は極めて高額(数百万円単位)になる可能性があります。
  • 被害者の処罰感情の強さ
    被害者の方の怒りや恐怖心、処罰を望む気持ちが強ければ、示談交渉は難航し、金額も高くなる傾向にあります。

なぜ示談交渉は弁護士に依頼しなければならないのか

「相場が分かったから、自分で交渉しよう」と思っても、通常、これは不可能です。

盗撮事件の示談交渉は、当事者同士で行うことはできません。その理由は以下の通りです。

1.被害者の連絡先を知ることができない

警察や検察は、被害者のプライバシーを守るため、加害者本人やその家族に、被害者の連絡先(電話番号や住所)を教えることはありません。

弁護士が「守秘義務を負う代理人」として間に入ることで、初めて捜査機関を通じて、被害者側に示談の申し入れを行うことが可能になります。

2.被害者の感情を逆なでし、交渉決裂を招く

もし仮に何らかの形で連絡が取れたとしても、加害者本人が被害者に直接接触することは、被害者にさらなる恐怖心や怒りを与える「二次被害」となりかねません。

「反省していない」と受け取られ、示談交渉は即座に決裂し、かえって被害者の処罰感情を強めてしまうでしょう。

特に、捜査中の事件について加害者が被害者に接触すると、証拠隠滅や被害者への不当な働きかけを行っていると判断され、逮捕の理由となる場合もあります。

3.適正な金額での交渉と、法的に有効な示談書の作成

弁護士は、上記のような相場観や事件の悪質性を踏まえ、適正な金額での解決を目指して冷静に交渉します。

そして、示談が成立した際には、「被害届を取り下げる」「加害者の処罰を望まない(宥恕する)」「本件について口外しない」「これ以上の請求はしない(清算条項)」といった、あなたの未来を守るために不可欠な条項を盛り込んだ、法的に有効な示談書を作成します。

示談が刑事処分に与える絶大な効果

弁護士を通じて示談を成立させることには、刑事手続きにおいて計り知れないメリットがあります。

❶不起訴処分の可能性が格段に高まる

検察官が処分を決める際、被害者との示談が成立し、被害者が処罰を望んでいない(宥恕している)という事実は、最も重要な判断材料となります。

これにより、起訴を見送る(不起訴処分)可能性が飛躍的に高まります。不起訴になれば、裁判は開かれず、前科もつきません。

❷刑の減軽・執行猶予につながる

万が一、起訴されてしまった場合でも、示談が成立していることは、裁判官が刑の重さを決める上で、被告人に最も有利な事情として考慮され、刑の減軽や執行猶予付き判決につながりやすくなります。

示談交渉は時間との勝負です

示談交渉は時間との勝負です

盗撮事件を起こしてしまった場合、あなたの人生が「前科」によって大きく変わってしまうかどうかの分かれ道は、いかに早く弁護士に依頼し、被害者の方との示談交渉を開始できるかにかかっています。

時間が経てば経つほど、捜査は進み、被害者の処罰感情も固まってしまいます。

ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、盗撮事件を含む刑事事件の示談交渉に豊富な経験がございます。

ご相談は秘密厳守です。初回のご相談は無料ですので、もし過ちを犯してしまい、深く後悔されているのであれば、取り返しのつかないことになる前に、一刻も早く私たちにご相談ください。

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