弁護士コラム

「一部実刑、一部執行猶予」とは?
全部実刑を回避する、もう一つの選択肢を弁護士が解説

2025.11.20

はじめに:「執行猶予」=「刑務所に行かない」とは限らない

はじめに:「執行猶予」=「刑務所に行かない」とは限らない

刑事裁判で有罪判決を受けるとなったとき、被告人やご家族が最も強く願うのは、「執行猶予」が付されること、つまり「刑務所に入らずに社会生活を続けられる」ことでしょう。

一般的に知られているこの執行猶予は、正しくは「全部執行猶予」といいます。 しかし、2016年の刑法改正により、これとは異なる、もう一つの執行猶予制度が導入されました。それが「一部執行猶予」です。

これは、「刑務所での服役」と「社会内での更生」を組み合わせたハイブリッド型の制度であり、「全部実刑」か「全部執行猶予」かという二択しかなかった従来に比べ、裁判所がより柔軟な判断を下せるようになりました。

なお、一部執行猶予の制度は導入後も改正が行われており、202561日から施行されている部分もあります。

この記事では、この「一部執行猶予」とはどのような制度なのか、「全部執行猶予」と何が違うのか、そして、弁護士がこの制度をどのように活用して弁護活動を行うのかについて、分かりやすく解説します。

「全部執行猶予」と「一部執行猶予」の決定的な違い

この2つの制度の最も大きな違いは、「判決後、すぐに刑務所に行くかどうか」です。

【従来型】全部執行猶予(ぜんぶしっこうゆうよ)

  • 判決例:「被告人を懲役3年、執行猶予5年に処する」
  • 内 容:言い渡された刑罰(懲役3年)の「全部」の執行が、一定期間(5年間)猶予されます。
  • 結 果:この猶予期間を、無事に(再び罪を犯すことなく)過ごすことができれば、刑罰権そのものが消滅します。つまり、直ちに刑務所に行く必要はありません。

 

一般的に被告人やご家族がイメージされている執行猶予はこちらの全部執行猶予です。

【新しい制度】一部執行猶予(いちぶしっこうゆうよ)

  • 判決例:「被告人を懲役2年に処する。その刑の一部である懲役6月の執行を2年間猶予する」
  • 内 容:言い渡された刑罰(懲役2年)のうち、「一部」(この例では懲役1年6月)については、猶予されず、実際に刑務所に服役しなければなりません。 そして、残りの「一部」(この例では懲役6月)の執行が、一定期間(2年間)猶予されます。
  • 結 果:まず、懲役1年6月間は刑務所で服役します。 刑期(1年6ヶ月)を終えて出所した後、猶予期間(2年間)がスタートします。この2年間を無事に過ごせば、残りの刑罰(6月)は免除されます。

 

一部執行猶予の期間中に保護観察が付される場合もあります。

なぜ「一部執行猶予」が導入されたのか?

この制度が導入された主な目的は、「再犯防止」「スムーズな社会復帰の促進」です。

特に、薬物犯罪(覚せい剤、大麻など)の再犯者などが、主な対象として想定されています。

「全部実刑」として長期間刑務所に収容するよりも、比較的短期間の服役で反省を促し、その後は早期に社会に戻して、保護観察所の監督のもと、専門の治療プログラムや自助グループに通わせる方が、再犯防止に効果的であるという考え方に基づいています。

「全部執行猶予」では刑罰として軽すぎるが、「全部実刑」では社会復帰が困難になるという、中間的な事案に対応するための制度です。

どのような場合に「一部執行猶予」になるか?

一部執行猶予の判決が下される可能性があるのは、まず前提として、言い渡される判決が「3年以下の懲役または禁錮」である場合です。

その上で、裁判官が、被告人を社会内で更生させることが相当であり、再犯防止に有効であると判断した場合に選択されます。

対象となりやすいケース

  • 薬物犯罪の再犯(前科あり):執行猶予期間中の再犯ではないなど、一定の条件を満たす場合。
  • 窃盗症(クレプトマニア)や性犯罪:専門的な治療やプログラムが必要と判断される場合。
  • 実刑前科はあるが、更生の意欲が強い:一定期間の服役は免れないが、その後の社会内での監督が有効と判断される場合。

「全部実刑」を回避する弁護活動

被告人にとって最も望ましいのは「全部執行猶予」です。しかし、前科(特に同種前科)がある場合や、犯行態様が悪質な場合など、「全部執行猶予」を獲得するハードルが非常に高い事案も少なくありません。

そのような事案で、検察官が「全部実刑(例:懲役2年)」を求刑してきた場合、弁護士は、次善の策として、「全部実刑は重すぎる。服役期間を最短にし、早期に社会内で更生させる『一部執行猶予』こそが相当である」と、裁判官に主張します。

一部執行猶予を勝ち取るために弁護士ができること

具体的な更生計画の提示

「全部実刑」よりも「一部執行猶予」の方が再犯防止に有効であることを、具体的に主張する必要があります。

弁護士は、被告人と協力し、薬物依存の専門病院への入所手配、窃盗症のクリニックへの通院予約、家族による強力な監督体制の構築など、社会内での具体的な更生計画を立て、証拠として裁判所に提出します。

地域の保護司との連携

社会内での更生をサポートする保護司と事前に連携し、受け入れ態勢を整えることも重要です。

被害者との示談

被害者がいる事件(窃盗、傷害など)では、被害者の方との示談が成立していることが、刑を軽くする上で絶対的に重要です。

服役期間を最短にし、早期の社会復帰を目指すために

服役期間を最短にし、早期の社会復帰を目指すために

「全部執行猶予」が難しいと思われる事案でも、決して諦める必要はありません。

「一部執行猶予」という選択肢を追求することで、服役期間を可能な限り短くし、社会復帰への道筋を早期につけることが可能になります。

このような専門的かつ戦略的な弁護活動は、刑事事件の経験が豊富な弁護士でなければ困難です。

ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、刑事事件の弁護活動に豊富な経験を有しております。ご家族が逮捕・起訴されてしまい、実刑判決の不安を抱えていらっしゃるなら、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

初回のご相談は無料です。全部実刑を回避し、あなたやご家族にとって最善の結果を得るために、私たちが全力でサポートいたします。

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