はじめに:不当な判決を覆す、最後のチャンス
地方裁判所や簡易裁判所で行われた第一審で、予想外に重い判決が下されたり、無罪の主張が認められなかったりした場合、ご本人やご家族が受ける衝撃と絶望感は計り知れません。
「もう全て終わってしまった…」と、諦めてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、第一審の判決は、決して最終結論ではありません。
日本の刑事裁判には「三審制」という制度があり、第一審の判決に不服がある場合には、上級の裁判所(高等裁判所)に対して、その判決の見直しを求める「控訴」を申し立てることができます。
この控訴審は、不当な判決を覆すための、極めて重要な機会です。
この記事では、刑事事件の「控訴審」とはどのような手続きなのか、第一審とは何が違うのか、そして、この厳しい戦いを勝ち抜くために弁護士のサポートがなぜ不可欠なのかを、分かりやすく解説します。
「控訴審」とは?
第一審のやり直しではない
まず理解すべき最も重要な点は、控訴審は「第一審の裁判を、もう一度ゼロからやり直す」場ではないということです。
控訴審は、第一審の裁判所(地方裁判所など)が行った裁判の進め方や判決内容に、「誤り」がなかったかどうかを、高等裁判所の裁判官が事後的に審査・レビューする手続きです。あくまで、第一審の裁判記録(証拠や証言など)をベースに審査が行われます。
控訴審で主張できること(控訴理由)
控訴審で判決を覆すためには、第一審の判決に以下のような「誤り」があったことを、具体的に主張する必要があります。
- 事実誤認
「自分はやっていない(無罪だ)」という主張のように、第一審の裁判所が、証拠に基づいて認定した事実に誤りがあったと主張すること。 - 量刑不当
事実関係は認めているが、言い渡された刑罰(例:懲役3年の実刑)が、事件の内容に比べて重すぎる、と主張すること。 - 法令適用の誤り
事実認定は正しいが、その事実に適用した法律の解釈や適用が間違っていると主張すること。 - 訴訟手続の法令違反
第一審の裁判手続きの進め方に、法律違反の重大な誤りがあったと主張すること。
第一審とここが違う!控訴審の重要なルール
控訴審には、第一審とは異なる、以下のような特殊なルールがあります。
① 書面中心の審理
控訴審の審理は、法廷でのやり取りよりも、弁護士が作成・提出する書面が中心となります。
特に「控訴趣意書」という書面が、その後の運命を左右する、最も重要なものです。
この書面に、第一審判決のどこが、なぜ、どのように間違っているのかを、法的な根拠と証拠に基づいて、論理的かつ説得的に記載する必要があります。
② 新たな証拠の提出は、原則としてできない
控訴審は、あくまで第一審のレビューであるため、第一審で提出しなかった新しい証拠を、後から自由に追加で提出することは、原則として認められていません。
第一審で議論されていなかった点が判決の大きな理由となっていて控訴審で追加の主張立証が必要と判断された場合や、第一審判決後に被害者との示談が成立した場合など、第一審で「やむを得ない事情」があった場合に限り、例外的に認められることがあるだけです。
③ 審理期間が非常に短い
第一審のように、何度も公判期日が開かれることは稀です。
多くの場合、たった1回の期日(15分~30分程度)で審理が終了し、後日、判決が言い渡されます。
控訴審の結末
控訴審の判決には、主に以下の3つのパターンがあります。
1.控訴棄却
「第一審の判決に誤りはない」として、控訴を退ける判決です。残念ながら、これが最も多い結末です。第一審判決が維持されます。
2.原判決破棄・自判(げんはんけつはき・じはん)
第一審判決を「誤りである」として取り消し(破棄)、高等裁判所が自ら新たな判決を言い渡します。
量刑不当が認められた場合に、刑を軽くする判決が下されるのは、このパターンです。(例:「懲役3年の実刑」を破棄し、「懲役3年、執行猶予5年」とする)
3.原判決破棄・差戻し(げんはんけつはき・さしもどし)
第一審判決を取り消し、審理をやり直させるために、事件を第一審の裁判所に差し戻す判決です。重大な事実誤認や手続き違反があった場合に選択されます。
なぜ、控訴審には弁護士が不可欠なのか
ここまで見てきたように、控訴審は極めて専門的で、特殊なルールのもとで行われる、非常に厳しい戦いです。
第一審の判決を覆すのは、決して簡単なことではありません。だからこそ、弁護士のサポート(特に控訴審の経験が豊富な弁護士)が絶対に必要になります。
1.高度な専門性が求められる「控訴趣意書」の作成
控訴趣意書は、単に「判決に不服です」と書くだけのものではありません。
第一審の膨大な裁判記録を全て読み込み、その中から法的な誤りを見つけ出し、説得力のある文章で主張を組み立てるという、極めて高度な法的知識、分析能力、文章構成能力が求められます。
これは、控訴審の経験が豊富な弁護士でなければ、到底作成できるものではありません。
2.第一審とは異なる戦略が必要
第一審と同じ主張を繰り返すだけでは、控訴審で勝つことはできません。
控訴審では、「なぜ、第一審の裁判官は判断を間違えたのか」という、審理の焦点を変えた新たな戦略が必要です。
第一審の弁護士とは別の弁護士に依頼し、新たな視点から事件を再検討することも、有効な戦略の一つです。
3.厳格なルールの遵守
控訴の申立てや控訴趣意書の提出には、厳格な期限が定められています。
これらの手続きを適切に、かつ遅滞なく進めるためにも、弁護士の管理が不可欠です。
不当に重い判決に泣き寝入りしないために
第一審で望まない判決が下されたとしても、決して諦める必要はありません。
しかし、控訴審という限られたチャンスを最大限に活かすためには、判決後、直ちに控訴審の経験が豊富な弁護士に相談し、依頼することが何よりも重要です。
ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、刑事事件の控訴審の弁護活動にも対応しております。
「判決に納得がいかない」「刑が重すぎる」「無罪を主張したい」という方は、判決謄本などをお持ちの上、一刻も早く当事務所にご相談ください。
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