はじめに:保釈請求のタイミングが成否を分ける
刑事事件で起訴されてしまい、被告人として身体拘束(勾留)が続いている…。
ご本人やご家族にとって、一日も早く社会生活に戻りたいと願うのは当然のことです。そのための最も重要な手続きが「保釈請求」です。
起訴された後であれば、保釈はいつでも請求することができます。しかし、やみくもに請求すれば認められるというものではありません。
実は、保釈請求には、その成功率を大きく左右する「適切なタイミング」というものが存在します。
弁護士は、事件の状況を冷静に分析し、最も効果的なタイミングを見計らって保釈請求を行います。
この記事では、刑事事件の保釈請求において、弁護士がどのようなタイミングを戦略的に選択するのか、その代表的な3つのタイミングについて分かりやすく解説します。
そもそも「保釈」とは?
まず、保釈は、「起訴された後」の被告人にのみ認められる手続きである、という点を理解しておく必要があります。逮捕されてから起訴されるまでの「被疑者」の段階では、保釈請求はできません。
保釈とは、一定の保証金(保釈保証金)を裁判所に納めることを条件に、裁判が終わるまで被告人の身柄を一時的に解放する制度です。
保釈請求を行う、3つの代表的なタイミング
保釈請求の成否に最も大きく影響するのは、検察官の「この被告人を保釈すべきでない」という反対意見の強さです。
特に、「罪証隠滅のおそれ」、つまり「被告人を保釈すると、証拠を隠したり、共犯者や証人と口裏合わせをしたりする危険がある」という主張が、保釈を阻む最大の壁となります。
弁護士は、この検察官の主張が弱まるタイミングを狙って、保釈請求を行います。
タイミング1:起訴された直後
検察官によって起訴状が裁判所に提出された、その直後に行う保釈請求です。
理論上、最も早く身柄が解放される可能性のあるタイミングであり、多くの事件でまずこのタイミングでの請求が検討されます。
一日でも早く社会復帰したいというご本人・ご家族の思いに応えるための、最初の重要なアクションです。
- メリット
成功すれば、最も早く身体拘束から解放され、仕事や家庭への復帰、そして裁判準備を落ち着いて進めることができます。 - デメリット(注意点)
起訴直後は、検察官が「まだ捜査すべき点が残っている」「共犯者との関係が解明されていない」といった理由で、「罪証隠滅のおそれ」を最も強く主張してくる時期でもあります。
そのため、裁判所も慎重な判断となり、他のタイミングに比べて保釈が認められない(却下される)可能性も低くありません。特に、追起訴予定の余罪がある場合には保釈が難しくなります。
タイミング2:追起訴が完了したとき
被告人が、最初に起訴された事件(本件)以外にも、関連する別の事件(別件)の疑いをかけられている場合があります。
検察官は、本件の捜査と並行して別件の捜査を進め、準備が整い次第、その別件についても追加で起訴します。これを「追起訴」といいます。
弁護士は、あえて最初の起訴直後には請求せず、全ての追起訴が終わるのを待ってから保釈請求を行うことがあります。
- メリット
全ての事件が起訴され、検察官の手持ちの捜査が一段落したこのタイミングでは、「これ以上、被告人が隠したりする証拠は出尽くしている」と評価できます。
そのため、「罪証隠滅のおそれ」という検察官の主張の説得力が弱まり、保釈が認められる可能性が起訴直後よりも高まります。 - デメリット(注意点)
追起訴が完了するまで、最初の起訴から数週間から数ヶ月、身体拘束が続くことになります。
タイミング3:第一回公判期日が終わったとき
裁判の第一回目(第一回公判期日)が終わった直後も、保釈請求の非常に重要なタイミングです。
- メリット
第一回公判期日の冒頭で、検察官は、これから裁判で証明しようとする事実(公訴事実)と、そのために使う証拠の全てを明らかにします(冒頭陳述・証拠調べ請求)。
つまり、検察官の手持ちのカードが全て公開されたこの段階では、「保釈したら、被告人がこれから出てくる証拠を隠滅する」という主張は、もはや成り立ちません。
特に、被告人が罪を認めている事件(認否事件)では、このタイミングでの保釈請求の成功率は極めて高いと言えます。 - デメリット(注意点)
第一回公判期日は、通常、起訴から1ヶ月~2ヶ月後に設定されます。そのため、それまでの期間は身体拘束に耐えなければなりません。
結局、どのタイミングが良いのか?
ここまで見てきたように、「このタイミングが絶対」という正解はありません。
- 事件の内容(罪を認めているか、争っているか)
- 共犯者の有無
- 被害者との示談交渉の進捗
- 検察官との事前の打ち合わせ
など、様々な要素を総合的に分析し、あなたの事件にとって、最も成功率が高いと見込まれるタイミングを戦略的に判断する必要があります。
だからこそ、弁護士の戦略的判断が不可欠
保釈請求のタイミングは、被告人の未来を大きく左右する、極めて専門的な判断です。経験豊富な弁護士は、
❶事件ごとの状況を的確に分析し、
❷検察官の反論を予測し、
❸成功率が高いタイミングを見極め、
❹そのタイミングに合わせて、説得的な内容の保釈請求書を作成します。
また、一度請求が却下されても諦めず、「第一回公判期日後」といった次の有利なタイミングを狙って、粘り強く再請求を行います。
一日も早い社会復帰のために、専門家にご相談を
身体拘束が長期化することは、被告人の社会復帰にとって大きな障害となります。保釈を勝ち取り、一日も早くご家族の元へ戻ることは、裁判を有利に進める上でも、そして人生を再建する上でも、非常に重要です。
ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、数多くの刑事事件を手掛け、適切なタイミングでの保釈請求により、多くのご依頼者様の身柄解放を実現してまいりました。
もしご家族が起訴されてしまい、身体拘束が続いているのであれば、一刻も早く当事務所にご相談ください。初回のご相談は無料です。
私たちが、あなたの事件に合わせた最善の弁護戦略を立て、一日も早い社会復帰に向けて全力を尽くします。


