はじめに:「ちょっと手伝っただけ」のつもりが…

「友人に頼まれて、車を運転して指定の場所まで送迎しただけ」
「お金に困っている知人に、使っていない銀行口座を貸してあげただけ」
「見張りを頼まれたけど、自分は何も盗んでいない」
このように、犯罪行為そのものを実行したわけではなく、主犯となる人物を「少し手伝っただけ」というつもりが、後日、警察から連絡があり、犯罪の「共犯」として捜査の対象となってしまうケースがあります。
これが、「幇助犯」です。
「自分は主犯じゃないから、大した罪にはならないだろう」と安易に考えるのは非常に危険です。
この記事では、幇助犯とは何か、どのような場合に成立するのか、そして、もし幇助犯の疑いをかけられてしまった場合に、なぜ弁護士のサポートが不可欠なのかを解説します。
「幇助犯(ほうじょはん) 」とは?
幇助犯とは、犯罪を実行した張本人(=正犯(せいはん))を助け、その犯罪行為を容易にさせた者のことを指します(刑法第62条)。
犯罪における「主役」が正犯だとすれば、幇助犯は、その犯行を円滑に進めるための「脇役」や「サポーター」のような立場です。
犯罪計画の中心にいたわけではなくとも、そのサポート行為がなければ、正犯は犯行を成し遂げられなかった、あるいは、もっと困難だった、という場合に成立します。
こんなケースも幇助犯に?具体的な事例
- 空き巣・強盗の幇助:
逃走に使われる車を運転する「運転手役」や、犯行中に見張りをする「見張り役」。
犯行に使う道具(バールなど)を手配する行為。 - 詐欺の幇助:
特殊詐欺(オレオレ詐欺など)グループのために、自分の銀行口座や携帯電話を譲り渡す行為。
被害者から現金を受け取る「受け子」やATMを操作してお金を引き出す「出し子」など。 - 傷害事件の幇助:
友人が他人と喧嘩している際に、凶器となる棒などを渡す、相手が逃げないように取り押さえる。 - 薬物犯罪の幇助:
薬物の密売人が使うための隠れ家として、自分のアパートの一室を貸す。
幇助犯が成立するための2つの条件
幇助犯として罪に問われるためには、主に以下の2つの条件が満たされる必要があります。
①犯罪を容易にする「幇助行為」があったこと
正犯の犯罪行為を、物理的または精神的に助ける行為があったことが必要です。
道具を貸す、場所を提供するといった物理的な手助けだけでなく、「こうすればうまくいく」とアドバイスをしたり、「お前ならできる」と励ましたりする精神的な手助けも、幇助行為にあたる可能性があります。
②「犯罪に協力する」という認識(故意)があったこと
これが最も重要なポイントです。幇助犯が成立するためには、「自分の行為が、相手の犯罪の手助けになる」ということを、少なくとも認識している必要があります。これを「故意」といいます。
例えば、「友人に包丁を貸したが、料理に使うものと信じており、まさか強盗に使うとは思ってもみなかった」という場合、犯罪に協力する故意がなかったとして、幇助犯は成立しない可能性があります。
しかし、「『ちょっとヤバいことに使う』と聞いていた」「高額な報酬と引き換えに口座を渡した」など、漠然とでも「自分の行為が何らかの犯罪に使われるかもしれない」と認識していれば、故意があったと判断される可能性が十分にあります。
幇助犯の刑罰
幇助犯の刑罰は、法律上「正犯の刑を減軽する」と定められています。つまり、正犯よりも刑が軽くなるということです。
しかし、これは決して「軽い罪で済む」という意味ではありません。
あくまで「正犯が犯した重大な犯罪」の共犯として処罰されるため、例えば、強盗罪(5年以上の懲役)の幇助であれば、たとえ減軽されても、懲役刑となる可能性は十分にあります。当然、有罪となれば「前科」もつきます。
幇助犯の疑いをかけられたら、なぜ弁護士が必要不可欠なのか
もしあなたが幇助犯の疑いをかけられてしまった場合、捜査段階で「手伝っただけだから」「自分は悪くない」といった主張をしても、捜査官に聞き入れてもらうのは困難です。むしろ、言い分が二転三転したり、不合理な弁解をしたりすると、心証を悪化させるだけです。
このような状況で、あなたの権利と未来を守るために、弁護士は以下のような重要な役割を果たします。
1.「犯罪の認識(故意)」がなかったことを法的に主張する
弁護士は、あなたから詳しく事情を伺い、「犯罪に使われるとは知らなかった」という点(故意の不存在)を、客観的な証拠や状況に基づいて、法的に説得力をもって主張します。これは、幇助犯の成立を争う上で、最も重要な弁護活動です。
2. 幇助の程度が軽微であることを主張し、寛大な処分を求める
たとえ犯罪への協力を認識していたとしても、その関与の程度が極めて軽微である、主犯に従属的な立場であった、といった事情を主張し、検察官に対して不起訴処分(前科がつかない、最も有利な処分)を求めたり、裁判官に対して執行猶予付きの判決を求めたりします。
3. 被害者との示談交渉を進める
犯罪に被害者がいる場合、被害者への謝罪と被害弁償(示談)を行うことは、刑の重さを決める上で極めて重要です。弁護士があなたの代理人として、被害者との示談交渉を誠実に進めます。
4. 警察の取調べに適切に対応する
捜査官の誘導的な質問に対し、どのように答えるべきか、黙秘権をどのように使うべきかなど、取調べへの対応を具体的にアドバイスします。不利な供述調書が作成されることを防ぎます。
「知らなかった」「少しだけ」が通用しないケースも。
すぐに専門家へ

幇助犯は、「知らなかった」という言い分がどこまで通用するのか、どこからが「手助け」と評価されるのか、その判断が非常に難しい犯罪類型です。
安易な自己判断は、取り返しのつかない結果を招きかねません。
ルーセント法律事務所では、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、共犯事件を含む数多くの刑事事件に対応してまいりました。
「友人を手伝ったことで、警察から連絡が来た」「自分の口座が犯罪に使われたかもしれない」など、少しでも不安に感じることがあれば、一刻も早くご相談ください。
ご相談は秘密厳守です。初回のご相談は無料ですので、一人で悩まず、まずは私たちにご連絡ください。