はじめに:軽い気持ちの職場での窃盗、その大きな代償

「誰も見ていないから、レジから少しだけ…」
「会社の備品だから、一つくらい持ち帰ってもバレないだろう…」
このような軽い気持ちで、職場の金銭や物品に手をつけてしまう。その一回の過ちが、あなたの人生にどれほど大きな影響を及ぼすか、想像したことがあるでしょうか。
職場での窃盗は、コンビニでの万引きのような一般的な窃盗とは、その意味合いが大きく異なります。それは、単に物を盗むという行為だけでなく、会社や同僚からの「信頼」を根底から裏切る行為だからです。
そのため、発覚した際には、厳しい処分が下される可能性が非常に高いのです。実際に当事務所でご依頼をお受けした事例でも、職場での窃盗は捜査の厳しさや処罰の相場が高い傾向にあります。この記事では、職場での窃盗がなぜ重く扱われるのか、発覚後にどう対応すべきか、そして、最悪の事態を回避するために弁護士のサポートがいかに重要であるかを解説します。
なぜ「職場での窃盗」は、
万引きより罪が重くなる傾向にあるのか?
同じ「窃盗罪」であっても、職場での窃盗は、スーパーでの万引きなどと比べて、悪質だと判断されやすく、重い処分につながる傾向があります。その主な理由は「会社からの信頼に対する裏切り」です。
会社からの信頼を悪用した行為
従業員という立場を利用し、会社から寄せられていた信頼を裏切って行われるため、その裏切り行為自体が悪質だと評価されます。
犯行の容易性
従業員であれば、会社の内部情報や資産にアクセスしやすいため、その立場を利用した犯行は、機会犯的な万引きよりも計画的・悪質と見なされがちです。
常習性の疑い
職場での窃盗は、一度だけでなく、長期間にわたって繰り返されているケースも少なくありません。その場合、被害総額も大きくなり、常習性も加味されて、より重い処分が検討されます。
問われる罪は「窃盗罪」だけではない
- 窃盗罪
他人の財物を盗む罪で、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。 - 業務上横領罪
経理担当者など、業務上、会社の金銭などを預かる立場の人が、その金銭を着服した場合などには、より重い「業務上横領罪」に問われる可能性があります。こちらの法定刑は10年以下の懲役であり、罰金刑の規定はありません。
発覚後の流れと、待ち受けるもの
職場での窃盗が発覚した場合、一般的に以下のような流れで事態が進行します。
❶社内調査と懲戒処分
まず、会社による内部調査が行われ、事実確認がなされます。
窃盗が事実であれば、就業規則に基づき、最も重い処分である「懲戒解雇」となる可能性が高いです。懲戒解雇となれば、退職金が支払われないことも多く、その後の転職活動にも大きな支障をきたします。
❷刑事事件化(被害届の提出)
会社は、警察に被害届や告訴状を提出し、刑事事件化する可能性があります。会社としては、他の従業員への示しや、再発防止の観点から、厳しい対応をとることが多いです。
❸逮捕・勾留の可能性
被害額が大きい、常習性がある、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合には、警察に逮捕・勾留され、長期間身柄を拘束される可能性もあります。
最善の解決への道:会社との「示談」
このような最悪の事態を回避するために、最も重要かつ効果的な活動が、会社(被害者)との「示談」を成立させることです。
示談とは?
あなたが犯した過ちを真摯に謝罪し、盗んだ金品を弁済(被害弁償)した上で、会社に許してもらう(宥恕:ゆうじょ)ための話し合い、およびその合意のことです。
示談の重要性
- 刑事事件化の阻止
示談が成立し、会社が「被害届は提出しません」と約束してくれれば、刑事事件になること自体を防ぐことができます。 - 不起訴処分の獲得
もし既に被害届が提出されていても、示談が成立し、会社が被害届を取り下げたり、「加害者の処罰は望みません」という嘆願書を提出してくれたりすれば、検察官が「起訴しない(=不起訴処分)」と判断する可能性が格段に高まります。
不起訴になれば、裁判は開かれず、前科もつきません。
なぜ、職場での窃盗こそ弁護士への依頼が不可欠なのか
犯罪行為によって信頼を裏切られた会社は、あなたに対して強い怒りや不信感を抱いており、加害者本人やその家族が直接示談交渉をしようとしても、感情的になってしまい、冷静な話し合いができないケースがほとんどです。
「会いたくもない」と、交渉のテーブルにすらついてもらえないことも少なくありません。
このような状況でこそ、弁護士の存在が不可欠となります。
1.当事者では困難な「示談交渉」を代理
弁護士が第三者として冷静に、かつ、あなたの代理人として会社側と交渉します。会社側も、弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避け、法的な観点から冷静に話し合いに応じやすくなります。
弁護士は、会社側に対し、迅速な被害回復など、示談に応じることのメリットも説明し、円満な解決を目指します。
2.刑事事件化(被害届提出)の阻止
窃盗が発覚したら、会社が警察に被害届を出す前に、いかに早く示談交渉を開始できるかが勝負です。
ご依頼いただければ、弁護士は直ちに会社側と連絡を取り、被害届の提出を待ってもらうよう働きかけることができます。
3.懲戒処分の交渉
刑事事件化を避けられたとしても、懲戒処分は避けられないことが多いです。
しかし、弁護士が交渉することで、一方的な「懲戒解雇」ではなく、話し合いによる「合意退職」の形にしてもらうなど、少しでも有利な条件での解決を目指せる場合があります。
4.警察の取調べへの対応
万が一、警察の捜査が始まった場合でも、取調べにどう対応すべきか具体的にアドバイスし、不利益な供述調書が作成されるのを防ぎます。
当事務所にご依頼いただいた場合の一般的な流れ
❶ご相談
事実関係、会社の状況、あなたの希望などを詳しく伺います。
❷会社との交渉開始
弁護士が直ちに会社(担当者や顧問弁護士)に連絡し、示談交渉を開始します。
❸示談書の作成・締結
被害弁償の方法や、被害届を出さない(または取り下げる)ことなどを明記した、法的に有効な示談書を作成し、締結します。
❹謝罪・被害弁償の実行
弁護士が謝罪の場に同行するなど、誠意ある対応をサポートします。
❺検察官との交渉(必要な場合)
示談書などを検察官に提出し、不起訴処分を求めます。
過ちと向き合い、社会復帰を目指すために

職場での窃盗は、決して許される行為ではありません。しかし、犯してしまった過ちから目を背けず、真摯に反省し、専門家の助けを借りて誠実に対応することで、未来への影響を最小限に抑え、社会復帰への道筋をつけることは可能です。
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