弁護士コラム

【2023年刑法改正】「不同意性交等罪」とは?
旧「強制性交等罪」から何が変わったか弁護士が解説

2025.07.09

はじめに:性犯罪に関する刑法、大きく変わりました

はじめに:性犯罪に関する刑法、大きく変わりました

2023713日、日本の性犯罪に関する刑法が大きく改正・施行されました。この改正は、性的な行為における「同意」の重要性を法律上明確にし、被害者の実態に即した保護を図るための、非常に重要な一歩です。

その中心となるのが、これまでの「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」を統合し、新たに創設された「不同意性交等罪(ふどういせいこうとうざい)」です。

 

「何がどう変わったの?」

「どんな行為が罪になるの?」

この記事では、この新しい「不同意性交等罪」について、これまでの法律と何が違うのか、そのポイントを弁護士が分かりやすく解説します。

これまでの「強制性交等罪」が抱えていた問題点

改正前の「強制性交等罪」では、罪が成立するために、加害者が「暴行又は脅迫」を用いて、被害者の「抵抗を著しく困難」にさせたことが必要でした。
しかし、実際の性被害の場面では、

  • 恐怖のあまり体が動かなくなってしまった(凍りつき反応)
  • 相手との力関係(上司と部下、教師と生徒など)から、逆らえなかった
  • アルコールや薬物の影響で、抵抗できる状態ではなかった

 

といった、明確な「暴行・脅迫」がなくても、意思に反して性的な行為を強いられるケースが数多くありました。

このような実態にもかかわらず、これまでの法律では「暴行・脅迫」や「抵抗が著しく困難だったこと」を立証するハードルが高く、被害者が泣き寝入りせざるを得ない状況が指摘されていました。

新しい法律「不同意性交等罪」の創設(令和5年7月13日施行)

【ポイント】 「同意がない」ことが処罰の対象に

 

今回の改正で最も重要な点は、処罰の根拠が「暴行・脅迫があったか」から「相手の同意なく性的な行為を行ったか」へと、明確にシフトしたことです。

法律は、被害者が「同意しない意思」を形成し、表明し、又は全うすることが困難な状態にさせて、あるいはその状態にあることに乗じて性交等を行った場合に、この罪が成立すると定めています。

「同意しない意思」が困難とされる8つの具体的な状態

では、どのような状態が「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」にあたるのでしょうか。

法律では、具体的な例として以下の8つの行為・原因を挙げています。

❶ 暴行・脅迫を用いること(これまでの強制性交等罪の内容を含みます)
❷ 心身の障害を生じさせること
❸ アルコール・薬物を摂取させること
❹ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること
❺ 同意しない旨を示す時間的・場所的いとまを与えないこと
(例:予期せぬタイミングや逃げ場のない状況で行為に及ぶ)
❻ 恐怖・驚愕させること、その心理状態を利用すること
(例:「凍りつき反応」で抵抗できない状態に乗じる)
❼ 虐待に起因する心理的反応を生じさせること
(例:長年のDVなど、支配関係にある相手からの行為)
❽ 経済的・社会的関係上の地位を利用すること
(例:上司が部下に対し、拒否すれば不利益な扱いをすると示唆して行為に及ぶ)

【注意】
これらはあくまで例示であり、ここに挙げられていない他の状況であっても、被害者が真に同意していなかったと認められれば、罪が成立する可能性があります。

今回の改正には、他にも重要なポイントが

  • 「不同意わいせつ罪」の創設:
    同様に、これまでの「強制わいせつ罪」「準強制わいせつ罪」も「不同意わいせつ罪」に一本化され、「同意がない」わいせつ行為が処罰の対象となりました。
  • 公訴時効の延長:
    「不同意性交等罪」の公訴時効(罪を起訴できる期間)が、10年から15年に延長されました。
  • 性交同意年齢の引上げ:
    いわゆる「性交同意年齢」が、13歳から16歳に引き上げられました。
  • 「グルーミング」行為の処罰:
    16歳未満の者を手なずけてわいせつな行為などをする目的で、面会を要求したり、支配下に置いたりする行為(いわゆるグルーミング)も、新たに処罰の対象となりました。

この改正が意味すること

今回の刑法改正は、「性的な行為は、当事者間の明確で対等な、真摯な同意の上で行われるべきものであり、同意のない一方的な行為は犯罪である」という社会的なメッセージを、法律上明確にしたものです。

これにより、これまで法律の隙間で救済されにくかった多くの性被害の実態が、処罰の対象として捉えられるようになり、被害者保護が大きく前進したと言えます。

不同意性交等罪と弁護士の役割

この新しい法律は、被害者にとっても、また疑いをかけられた側にとっても、弁護士のサポートが不可欠であることを意味します。

【被害に遭われた方へ】

  • あなたが受けた被害が、この新しい法律でどのように評価されるのか、法的な観点からのアドバイスを弁護士に求めてください。
  • 弁護士は警察への相談や告訴(被害を申告し処罰を求めること)の手続きを全面的にサポートすることができます。
  • 捜査や裁判の過程で、二次被害に遭うことがないよう、あなたの心に寄り添い、権利を守ります。
  • 弁護士は加害者に対する損害賠償(慰謝料)請求についても、併せて対応することが可能です。

【疑いをかけられてしまった方へ】

  • 新しい法律では、「相手も同意していると思った」という安易な言い分は、これまで以上に通用しにくくなっています。
  • どのような状況が「同意がない」と判断されるのか、専門的な知識がなければ、ご自身の状況を正しく把握し、防御活動を行うことは困難です。
  • 不同意性交等罪は、極めて重い刑罰が科される重大な犯罪です。疑いをかけられた場合は、直ちに弁護士に相談し、適切な対応をとる必要があります。

被害者が年少者の場合はより重く処罰される

実務上、被害者が未成年など年少者の場合の不同意性交等罪は、被害者が大人の場合と比べて厳しい処罰となるのが通常です。

不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑ですが、被害者との示談が成立していない場合は、起訴され実刑(執行猶予が付かず、直ちに刑務所での服役が始まる判決)となります。

当事務所では、被害者側・加害者側ともに不同意性交等罪の取り扱いがありますが、年少者が被害者となっている事件については、示談の有無が実刑か執行猶予かの分水嶺となっています。

「同意」の重要性と、困ったときの相談窓口

「同意」の重要性と、困ったときの相談窓口

今回の刑法改正は、私たち一人ひとりに、性的な関係性における「同意」の重要性を改めて問いかけています。

もし、あなたが性的な被害に遭い、苦しんでいるのなら、決して一人で抱え込まないでください。

「これは犯罪にあたるのだろうか」「誰に相談すればいいのかわからない」と感じたときは、勇気を出して、信頼できる相談機関、そして私たち弁護士にご相談ください。

ルーセント法律事務所は、宝塚市・西宮市をはじめ阪神地域において、性犯罪被害をはじめとする刑事事件に関するご相談に、真摯に対応しております。

ご相談内容は秘密厳守です。あなたの尊厳と未来を守るため、法的な専門家として全力でサポートいたします。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。

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