弁護士コラム

【2025年施行も】知っておきたい刑法改正:
拘禁刑・執行猶予・侮辱罪はどう変わった?弁護士が解説

2025.06.02

はじめに:私たちの生活に関わる刑法の変化

私たちの社会のルールブックともいえる「刑法」が、近年、いくつかの重要な点で改正されました。

これらの改正は、刑罰のあり方、犯罪からの立ち直り(更生)、そしてインターネット上の言動に至るまで、私たちの生活にも関わる可能性のある変化を含んでいます。

「何がどう変わったの?」「自分たちの生活にどう影響するの?」

「何がどう変わったの?」「自分たちの生活にどう影響するの?」

今回は特に重要な3つの改正点、すなわち

1.「拘禁刑」の創設2.「執行猶予制度」の拡充

そして既に施行されている

3.「侮辱罪」の法定刑引上げについて、弁護士が分かりやすく解説します。

1. 「懲役」と「禁錮」が一本化 → 『拘禁刑』の創設 (2025年6月1日施行済)

これまでは?

日本の刑罰のうち、身体の自由を奪うもの(自由刑)には、刑務所内で労働を義務付けられる「懲役(ちょうえき)」と、労働義務のない「禁錮(きんこ)」がありました。

何が変わる?(2025年6月1日から)

この「懲役」と「禁錮」が廃止され、新たに拘禁刑(こうきんけい)」という一つの刑罰に一本化されます。

なぜ変わる? 目的は?

これまでの「懲役刑=刑務作業中心」「禁錮刑=ただ収容されるだけ」という形では、受刑者一人ひとりの特性や問題に合わせた効果的な改善指導・更生支援がしにくいという課題がありました。

「拘禁刑」では、刑務作業(労働)だけでなく、薬物依存離脱指導、被害者の心情を理解するための指導、再犯防止教育、就労支援など、その人の更生に本当に必要なプログラム(処遇)を、より柔軟に、個別的に行えるようにすることを目的としています。

刑務作業も、必要に応じてリハビリの一環として行われます。

ポイント

これまでより加害者の「改善更生」に重点を置いた刑罰へと変化します。

2. 執行猶予中の「再度の執行猶予」が可能に? (2025年6月1日施行済)

これまでは?

犯罪を犯して有罪判決を受けても、直ちに刑務所に入らずにこれまでどおりの社会生活を送るチャンスが与えられるのが「執行猶予(しっこうゆうよ)」です。

しかし、その執行猶予期間中に再び罪を犯してしまうと、原則として前の刑の執行猶予が取り消され、前の刑罰と新しい罪の刑罰の両方を受けなければならず、社会復帰が非常に困難になるという問題がありました。

何が変わる?(2025年6月1日から)

執行猶予期間中に再び罪を犯してしまった場合でも、一定の条件(※)を満たせば、例外的に、再び執行猶予が付く可能性が出てきます。

(※)新しい罪が比較的軽微(1年以下の懲役・禁錮)であること、主に過失による犯罪であること、更生への意欲が高いと見込まれることなど、非常に厳しい条件が定められています。また、この「再度の執行猶予」には必ず保護観察(社会内での指導・監督)が付されます。

なぜ変わる? 目的は?

執行猶予中に再び軽微な罪を犯してしまった人を、直ちに刑務所に送るのではなく、社会の中で更生を促す機会をもう一度与えようという考え方です。

特に、依存症からの回復途上にある人などの立ち直りを支援し、再犯防止につなげる狙いがあります。

ポイント

あくまで例外的な措置であり、厳しい条件がありますが、社会内での更生の道が少し広がります。

3. ネット中傷対策も:『侮辱罪』の法定刑引上げ(2022年7月7日施行済)

何が変わった?(既に施行されています!)

インターネット上の誹謗中傷(ネット中傷)が深刻な社会問題となる中、人を公然と侮辱する行為に対する「侮辱罪(ぶじょくざい)」の法定刑(法律で定められた刑罰の上限)が大幅に引き上げられました。

  • 改正前「拘留(30日未満)又は科料(1万円未満)」
  • 改正後「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」
なぜ変わる? 目的は?

SNSなどでの匿名の誹謗中傷が、時に人の命を奪うほどの深刻な結果を招くことがあるにもかかわらず、改正前の侮辱罪の刑罰は極めて軽いものでした。

今回の厳罰化は、ネット中傷に対する抑止力を高め、悪質な侮辱行為には厳しい刑事罰が科されることを明確にするものです。

ポイント
  • 「バカ」「キモい」といった具体的な事実を示さない抽象的な侮辱でも、公然と行えば処罰の対象となり得ます。
  • 法定刑が引き上げられたことで、加害者の特定(発信者情報開示請求)がしやすくなる、公訴時効(罪を起訴できる期間)が1年から3年に延びるといった影響も出ています。
  • 安易なネットへの書き込みが、以前よりも重い刑事責任を問われる可能性があることを、強く認識する必要があります。

これらの改正が意味すること・注意点

今回の刑法改正は、全体として、犯罪からの立ち直りを重視する方向性(拘禁刑、執行猶予の拡充)と、現代社会の問題(ネット中傷)に対応して厳罰化する方向性(侮辱罪)という、二つの側面を持っていると言えます。

ただし、「改善更生」が重視されるからといって、犯罪行為そのものが軽視されるわけではありません。また、法律の適用は個々の事案によって異なります。

まとめ:法改正と私たち

まとめ:法改正と私たち

法律は、社会の変化に合わせて変わっていきます。これらの刑法改正の内容を知っておくことは、万が一、ご自身やご家族が何らかのトラブルに巻き込まれた際に、冷静に対応するための一助となるでしょう。

特に、侮辱罪の厳罰化は、インターネットを利用する全ての人に関わる重要な変化です。

もし、ご自身が刑事事件・ネットトラブル等に関与してしまった場合には、決して自己判断せず、必ず弁護士にご相談ください。法律の専門家として、最新の法知識に基づき、あなたの状況に合わせた最適なアドバイスとサポートを提供いたします。

ルーセント法律事務所では、刑事事件、インターネット上のトラブルに関するご相談も随時受け付けております。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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