特定の方に対して好意を持つことは、正常なことです。また、人間関係が壊れ怨念の感情を抱いてしまうこともあるかもしれません。
しかし、好意でも怨念でも、つきまとったり、待ち伏せしたり、無言電話や行き過ぎた連絡などをするとストーカー規制法違反となる可能性があります。
ストーカーは厳しい処罰の対象となります。ストーカー行為をしないように気をつけていただくとともに、万が一してしまった場合には冷静に対処する必要があります。
以下では、ストーカー規制法や加害者・被害者の立場からするべきことについて解説しています。
ストーカー規制法で禁止されている行為とは
ストーカー規制法が禁止する「ストーカー行為」は、つきまとい等の行為を反復して行うことです。また、行為の目的が恋愛感情や怨嗟の感情を充足するものである必要があります。
なお、技術の進歩やストーカー被害の増加に伴い、令和3年8月に改正ストーカー規制法が施行され、禁止される行為がつきまとい行為以外にも拡大されています。
具体的には、
- GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等
- 被害者が実際にいる場所の付近を見張ることやうろつくこと
- 拒否されたにもかかわらず手紙などの文書を連続して送ること
の3つが追加されています。
つきまとい等とは
ストーカー規制法が規制する「つきまとい等」とは、具体的に以下のようなことを指します。
- つきまとう
- 待ち伏せする
- 立ちふさがる
- 見張る
- 押しかける
- 自宅や職場・学校などの近くを見張り、うろつくことや押しかけること
- 帰宅直後に「おかえりなさい」と電話やメールをすること
- 被害者の行動や服装を告げること
- 面会や交際、復縁を要求すること
- プレゼントを受け取るよう要求すること
- 暴言を吐く、怒鳴る
- 自宅前で大声や騒音を出す
- 無言電話をする
- 拒絶されていてもメールやメッセージを送る
- 汚物や動物の死骸など不快なものを送る
- SNSなどに誹謗中傷を投稿する
- わいせつな写真や動画を送りつけたり、SNSに投稿する
- 電話やメールで卑猥な言動をすること
など
位置情報無承諾取得等とは
位置情報の無承諾取得等は、承諾なく被害者の所持するGPS機器等の位置情報を取得する行為や、被害者が所持する物にGPS機器等を取り付けることです。
(例)
・ 被害者のスマートフォンに位置情報共有アプリをインストールして位置情報を取得すること
・ 被害者の自動車にGPS機器を取り付けること
・ 被害者にGPS機器を取り付けたプレゼントを渡すこと
など
被害者が実際にいる場所の付近における見張り等とは
改正前のストーカー規制法では、自宅や職場などの「被害者が通常いる場所」付近での見張りやうろつきが違法とされていました。
改正により、「被害者が実際にいる場所」の付近における見張りやうろつきも規制対象とされています。
(例)
・ 被害者が食事をしているレストランに押しかけること
・ 被害者が宿泊しているホテルの付近をうろつくこと
など
拒否されたにもかかわらず文書を連続して送ることとは
改正前のストーカー規制法では、拒否されたにもかかわらず電話を何度もかける行為や、電子メール、メッセージの送信が違法とされていました。
改正により、手紙などの「文書」を連続して送る行為も規制対象とされています。
なお、手紙の送付については改正前も各都道府県の迷惑行為防止条例により処罰されていましたが、改正によりより重いストーカー規制法違反となりました。
(例)
・ 被害者の自宅や勤務先に毎日手紙を送ること
・ 被害者の自宅の郵便ポストに手紙を投函すること
など
ストーカー行為をしたときの罰則
ストーカー規制法 第18条では、違反した際の罰則を「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と規定しています。
また、事前に公安委員会や警察署から禁止命令を受けていたにもかかわらず、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が課されます。
ストーカーで逮捕や処罰に至る流れ
被害者が捜査機関に対してストーカー被害を申告した場合、被害者から110番通報の発信があれば直ちに現場に急行できるように110番登録を行ったり、パトロールの強化を行います。
悪質なケースでは、警察が加害者に連絡をして警告や禁止命令などの措置を行います。
特に悪質なケースや緊急性のあるケースでは直ちに加害者を逮捕することもあり、警告や禁止命令に違反した場合にも逮捕となるケースが多いです。
加害者はその後、起訴されて刑事処罰を受けます。
非親告罪化するストーカー行為
2016年の法改正で、ストーカーは非親告罪になっています。
非親告罪とは、被害者からの申告がなくても警察が事件を認知すれば、逮捕や処罰ができる種類の罪のことです。
警察は、警告や禁止命令などの措置を行った事案については被害者からの申告がなくとも随時被害が発生していないか確認しています。単に被害者がストーカー行為に気づいていなかったとしても警察が独自に捜査をすることによってストーカー行為が判明した場合、逮捕や処罰を受けることになります。
まとめ
もしも万が一あなたがこの記事にまとめているストーカー行為をおこなっている場合、直ちにやめるようにしてください。
特に、警察から警告を受けている場合や捜査が進んでいる場合は弁護士に今後の対応を依頼していただくべきです。
ストーカー規制法違反は他の犯罪に比べても逮捕や処罰されやすい類型の事件です。
逆にストーカー被害を受けて悩んでいる方や不安を抱いている方は迷わずに警察に相談をしてください。事態が悪化することで、犯罪がエスカレートするおそれがあります。
警察に相談する際は、手紙やメールの内容、加害者の発言の録音などを持参することをおすすめいたします。
警察からの警告と併せて、弁護士からも警告を行うことや損害賠償請求を行うことができます。
ストーカー事件の処罰や被害でお困りの方は、当事務所までご相談ください。